2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K05824
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Research Institution | Norinchukin Research Institute Co., Ltd |
Principal Investigator |
若林 剛志 株式会社農林中金総合研究所, 基礎研究部, 主任研究員 (00634388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
王 雷軒 株式会社農林中金総合研究所, 調査第二部, 主事研究員 (90899296)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 農地媒介組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、経済学的視点から農地流動化を促進する農地媒介組織のあり方としてどのようなあり方が合理的なのかという問いを立て、研究を進めている。当初の研究実施計画において、2年目となる2022年度は、中国の農地媒介組織である農村産権交易所と日本の農地中間管理機構を訪問の上、聞き取り調査を行うこと、その調査結果と1年目の研究成果に基づいて、日中の農地媒介組織の比較研究を行うことを課題としていた。 以上の目的(研究上の問い)および実施計画に照らし、2022年度の研究成果として挙げられるのは、日中の農地媒介組織の比較研究を実施したことである。比較研究は、1年目の研究成果である若林・王(2021)と日本の農地中間管理機構に関する文献を参照するとともに、2022年に実施した日本国内での農地中間管理機構への聞き取り調査の結果を踏まえながら行った。これにより、当初、本研究で想定していた最低限の研究成果を出すことができた。 一方、2021年度および2022年度に計画していた中国での現地調査は、主としてCovid-19の影響により実現しなかった。そのため、2022年度に実施した上記比較研究も、中国に実態を十分に踏まえることができなかったという問題が生じている。また、2022年8月に中国の研究者が行う予定だった農民への標本調査に、農村産権交易所の利用状況等に関する質問項目を組入れていただく手配を進めたが、中国の研究者の中国国内移動が制限されたため、調査は延期された。その他、不十分ながら2021年度から継続して行っている中国の複数の研究者とのオンラインでの意見交換では、農村産権交易所に関する政策動向等を一定程度知ることができた。それでもなお、現地調査による情報収集が本研究の基礎であることから、研究の進捗が想定よりかなり遅れていると認識している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「遅れている」とした最大の理由は、研究方法の中心に中国での農村産権交易所の現地調査を置いているにも関わらず、それが一度も実現していないことにある。この研究を開始した2021年4月から2023年3月までは、Covid-19の影響により中国での現地調査実施が困難な状況であり続けた。 これに対し、順調に進展した点は、日本国内における農地中間管理機構への聞き取り調査である。また、限られた情報の中にあり順調とは言えないものの、研究が進展したと考えていることは、日中の農地媒介組織の比較研究を行い、執筆できたことである。その成果は、若林・王(2022)として発表した。 その他、中国での現地調査未実施のなかで、本研究に協力してくださっている中国の研究者とオンラインで意見交換を行った。これにより、農村産権交易所をめぐる政策動向の動きを知ることができた。また、2022年度にCovid-19対応として検討していた研究推進方策のうち、中国の研究者が行う農民への標本調査の調査票に、交易所に関する項目を(研究チームの調査目的を阻害しない範囲で)追加していただく件は、交渉の末、了承を得た。しかし、その調査が予定されていた2022年8月は、中国の研究者の中国国内移動が制限されたため、調査は延期された。一方の中国の研究者への現地調査の委託は、中国国内での移動制限等があり実現しなかった。従って、農村部を中心に農村産権交易所の実態把握が不十分であることは引き続き課題であり続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の研究推進方策は概ね以下の通り4点に分けられる。 第1に、引き続き論点抽出と比較研究を進めながら、経済学的考察を行う準備を進める。論点抽出は2021年度、比較研究は2022年度、経済学的考察は2023年度の研究課題であるが、それぞれを同時並行的に行う。本研究の基礎である中国での現地調査が不十分であることが研究推進上の問題であり続けるが、可能な範囲でこれらを行う予定である。第2に、必要に応じて農地中間管理機構への追加調査を行う。2022年に農地中間管理機構の協力の下、同機構から聞き取った内容の更新を行う。第3に、中国での現地調査を実施する予定である。これは、本研究を行う上での基礎となるものである。第4に、第3の推進方策である中国での現地調査を補完する対応である。1つは、中国の研究者との対面および非対面での意見交換の継続である。2つは、農民を対象に、農地に関する継続的な標本調査を行っている中国の研究チームとの連携(調査委託)である。2022年度に、(研究チームの調査目的を阻害しない範囲で)標本調査の調査票に交易所に関する項目を追加していただくことの了承を得ている。この調査は延期されているが、それをフォローする。3つは、状況に応じた中国の研究者への現地調査の委託である。農村部の交易所の状況や交易所の中でも農地の出し手である農民に近い郷鎮や村における取引チャネルの動向把握が不十分であることから、必要に応じて検討する。 2年目まで中国での現地調査が実現していない現状から、研究計画の遅れを取り戻すことは難しく、研究期間の延長も視野に入れているが、中国の研究者の協力も得ながら中国での現地調査を実施することができれば、2022年度までの遅れを2023年度に一定程度取り戻すことができると考えている。
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Causes of Carryover |
研究実施計画において、2021年度は実態調査と論点の抽出、2022年度は実態調査と比較研究、2023年は仕上げとして農地媒介組織に関する経済学的考察を行うこととしている。しかし、現在までの進捗が「遅れている」と認識していることから、「今後の研究の推進方策」で述べた通り、当初予定の現地実態調査に加え、中国研究チームへの標本調査等の委託を検討しているところである。 従って、研究代表者および研究分担者ともに、文献調査等もさることながら、現地実態調査を進めていく。これらに加え、分析が進めば学会発表等による成果報告や原稿執筆も順次進めていく予定である。 これに伴い、物品費として文献購入費が、旅費として国内および海外調査旅費、研究成果報告旅費が、謝金およびその他として現地調査における補助謝金および委託調査費が生じる予定である。
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