2021 Fiscal Year Research-status Report
土壌雨量指数を用いた里地里山における土地利用形態別の土壌の保水性・排水性評価
Project/Area Number |
21K05837
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
江波戸 宗大 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (00391376)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南光 一樹 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40588951)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 土壌硬度 / 雨滴粒径分布 / 保水性 / 排水性 / 里地里山 / 土壌雨量指数 / 土壌水分 / 土地利用形態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、里地里山の土地利用形態が異なる土壌について、雨水の排水・保水機能を土壌雨量指数と関連づけて解明することを目的としており、2021年度は、① 雑木林・水田・放牧地における土壌硬度三次元分布の評価を行い、② 雑木林・水田・放牧地に降り注ぐ雨の量と質および土壌の深さ別の土壌水分を経時的に把握した。 調査地の土壌硬度三次元分布は、降水量が多くなる時期にあわせて3回(6/11、9/29、11/15)調査を行った。雑木林ではいつの時期でも深さ5cmで貫入抵抗値が2700kPaを超え始め、放牧地では6/11で一番軟らかい傾向ではあったが、いつの時期でも深さ11cmで貫入抵抗値が2700kPaを越える面積が大きくなった。これは土地利用形態の違いによって雨が上から浸透できる深さが異なることを示唆していると考えられた。 降雨イベントごとにレーザー雨滴計によって雨滴の体積や直径の分布を雨の量と質として解析を試みたところ、11/21の降雨イベントでは、放牧地では直径0.8mmの雨滴量が一番多い分布を示したが、雑木林では雨滴分布が2つのピークで表れて、直径4.6mmの雨滴量が一番多く、土地利用形態の違いによって雨が地表におよぼすインパクトが異なり、雨滴が持つエネルギー量が雑木林で一番大きいことが示された。 プロファイル土壌水分計で雑木林と放牧地の深さ10, 20, 30, 40cmの土壌水分について経時変化を9/28からモニタリングしたところ、雑木林では深さ10cmで変動が大きく、深さ20cmで一番低い値で推移していたが、放牧地では深さ10cmで一番低い値で推移し、深さ20cmで高い値で一定していた。これは、土壌硬度三次元分布との関連で土地利用形態の違いによる雨水の浸透程度を示し、放牧地においては深さ11cmまで雨水が浸透し、雑木林では深さ5cm以下には雨水が浸透できないためと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査地において貫入式土壌硬度計を用いて土壌硬度三次元分布を3回調査し、土地利用形態の違いを評価できていた。太陽電池パネルおよびバッテリ等を設置して調査地での電源を確保してから、転倒升雨量計、レーザー雨滴計、プロファイル土壌水分計、調査地の水平方向の土壌水分を調査するための土壌水分センサ8箇所2水準(深さ20cm, 40cm)を設置し、土地利用形態別に雨の量と質、土壌水分について経時的な推移をモニタリングできるようにした。 当初予期していないこととして、機器類の設置当初に野生動物に様々なケーブルを食い千切られてデータの欠損が続いた。現在では対策を行っているため、安定的にデータ収集できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
土地利用形態別に雨の量と質、土壌水分について経時的な推移をモニタリングできるようになったので、降雨イベントごとの雨の量と質を定量的に評価し、雨水が地表に与えるインパクトやエネルギー量に基づいた土地利用形態別の土壌水分の変化を明らかにする。 降雨イベントごとに日数を空けながら土壌硬度三次元分布を調査し、また、調査地の水平方向の土壌水分分布の傾向を把握して、土壌硬度と土壌水分を比較することで、土地利用形態別に土壌の保水性・排水性を評価する。 降雨に関する様々なデータを収集できることにより、気象庁と同じパラメータを用いて土壌雨量指数を算定し、土地利用形態の違いが見られるか検証する。
|
Causes of Carryover |
調査のために設置する機器の電源供給について、電力消費量や季節ごとの日照時間の変化などで電力量が足りなくなる可能性があったため、ソーラーパネル、バッテリなどの消耗品は初年度に多めに予算を組んでいた。研究が始まった段階で、ソーラーパネル、バッテリなどの消耗品は既に研究者らが持っていたものを供試して様子を見たため、初年度の購入量が減った。これから電源が必要な調査機器を調査地に投入する予定もあり、また、バッテリなどがへたったときに購入することも考えて、2年目以降に増設および更新する予定である。 また、調査地で収集したデータをクラウドへ送信するシステムも設置したが、当初の予定よりも安く準備できた。2年目以降に様々なセンサによるデータ収集の量が増えることが見込まれ、そちらの装備の増強に予算の補填をすることになる。 一方で、野生動物によるケーブルの切断などでデータ収集に問題が発生し、システムを維持するための消耗品を購入する必要がでてきた。
|