2022 Fiscal Year Research-status Report
農村の地域資源保全を支援する直接支払の効果の質的研究アプローチによる解明
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21K05840
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
遠藤 和子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 研究領域長 (90343764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芦田 敏文 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 上級研究員 (70414448)
上田 達己 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 上級研究員 (80414431) [Withdrawn]
藤井 清佳 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 研究員 (80885012)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多面的機能支払交付金 / 中山間地域等直接支払 / 農地保全 / 地域営農 / 水利施設維持管理 / 地域自治組織 / 経済波及効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
島根県A市、宮城県下の中山間地域等直接支払集落協定組織、多面的機能支払交付金活動組織(以下、中山間組織、多面組織)を対象に、①農地保全ゾーニング、②地域営農の発展・存続、③農業生産基盤の維持管理、④地域の共同活動、⑤地域内外への経済波及効果から分析を進めた。 (1)A市内全ての多面組織を対象にデータ収集を継続し活動組織の予算規模や活動内容の特徴を明らかにするとともに、交付金支出の地域経済波及効果を明らかにした(視点⑤)。(2)A市における転用・非農地判定面積量およびその地域性について2017年、2022年の2時点から把握した結果、転用・非農地判定は直接支払対象農地では原則実施されておらず、直接支払が農地保全ゾーニング効果を発揮していることを確認した(視点①)。(3)A市では中山間地域等直接支払あるいは多面的機能支払を実施していることを県営ほ場整備事業の事業地区採択の条件としており、直接支払制度への取り組みは地域の合意形成の調整コストを下げる方向に作用しており、その結果、地域営農の存続や農業生産基盤の維持管理にも好影響を与えていると考えられた(視点②③)。(4)宮城県内における全多面組織に対するアンケート調査より、多面的機能支払の活動は,地域自治組織等既存組織と連携するケースが多く、地域自治機能を利用している面と、地域自治組織の再編に寄与している面との両面から評価できることを明らかにした(視点③④)。(5)土地改良区が主導して管内受益全農地を対象に多面組織の広域化を図った事例の分析から、事務作業が障壁となり活動を実施できなかった地域が広域化傘下に入ることにより参入できたり、既に実施している地域についても負担が軽減されたり等の効果が観察された。土地改良区主導の管内受益農地を対象とした広域化は,多面的機能支払の持続的な運営体制再編のモデルの一つとして評価できる(視点③④)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
島根県A市の中山間地域等直接支払集落協定組織、多面的機能支払交付金活動組織の複数年の実績報告等データの収集を継続的に進め、活動組織の予算規模や活動内容の側面からその特徴を明らかにし、農業農村工学会において学術発表を行った。本発表については、農業農村工学会農村計画研究部会の奨励賞を受賞しており、着実に成果の公表につなげている。宮城県下で実施されたアンケート調査の結果からは、①~⑤の視点に基づき、日本型直接支払の質的な効果の把握と解析を進めている。主要なデータ収集は完了しており、学会誌投稿へ向けて執筆を進めており、最終年度となる次年度には、当初の目標を達成できると見込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
中山間地域等直接支払制度、多面的機能支払交付金が地域へもたらす影響・効果について明らかにすべく、データ収集と分析を進めてきた。多くの活動組織にあたるほどに、地域条件や地域の主体性はさまざまであることがわかってきている。今後はさらに、収集したサンプルの解析を進め、(1)地域が直面する地域条件に応じた活動内容の特徴、(2)主体的な発意や裁量の種類や程度、(3)事業の効果として把握されるものの種類と程度に応じた整理を通じ、直接支払交付金の効果を明らかにしていく。また、土地改良区の枠組みを利用した多面的機能支払の持続的な運営体制再編モデルの例のように、直接支払交付金を活用する活動組織のパフォーマンス向上と地域への効果発揮につながる知見を見出していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において、直接訪問による調査の実施が制限され、2021年度から2022年度へ次年度使用額が加わっていたところ、一名研究分担を外れ、かつ、研究代表者が2022年度より研究管理業務にエフォートを割くことになったため、直接訪問による調査機会の増加を計画通りに図ることができなかった。2023年度は、直接訪問による調査機会の確保と合わせ、研究成果公表のタイミングにあたることから、論文のオープンアクセス化の費用に充てるなどして予算を適切に執行していくことにする。
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Research Products
(1 results)