2021 Fiscal Year Research-status Report
深層学習モデルで生成する豪雨の時空間分布を活用した流域の水害リスク評価
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21K05841
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
皆川 裕樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 上級研究員 (70527019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福重 雄大 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 研究員 (80845850)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 流域水管理 / 豪雨対策 / 深層学習 / 水害リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題で目標とする降雨時空間データへの深層学習適用に必要となる学習データの整理を実施した。対象地区として、R2年に豪雨による大規模洪水被害が発生した山形県最上川流域を選定した。まず、対象流域全体を含む広域矩形エリア(約217km×125km)を設定し、1kmメッシュ単位で時間単位のレーダー解析雨量(2008年~2019年)を抽出した。そこから、特定メッシュの雨量条件でイベント時の時空間データを書き出す仕組みを設定し、 深層学習にむけた学習データ生成の下準備が完了した。 深層学習による豪雨時空間データの生成では、GANを中心に様々な手法の適用可能性を検討するべく、既往研究や専門知識を有する業者との打ち合わせを実施した。その中では、全ての処理を1モデルで実施する手法、降雨場の生成と移動を分けて別モデルを適用する手法など複数の案が出ており、R4年度にそれらの案を整理してプロトタイプの深層学習モデルモデリングを行う。また、検討の中で深層学習実施に大きな計算リソースが必要であることが判明したため、大容量GPUによる並列計算環境を整備した。 降雨データ処理と同時に、対象流域への水文モデル適用に着手した。最上川全流域(約6800km2)と、上流~中流域まで(約3700km2)の2通りの範囲に分布型水循環モデルを適用するため、DEMに従い河道流路を生成した。モデルは、入力雨量にあわせて1kmメッシュ単位として、計算時間刻みは1時間単位とした。計算にあたり、流出に関連するパラメータ最適化するため、流域内の水位・流量観測値を入手した。2008年以降で、洪水イベントを11イベント抽出し、検証データに活用した。R4年度は最適パラメータを同定したモデルを用いて、同時に、水田域の流出抑制や雨水貯留等の効果を評価するためにモデル内における水田の流出機構を整備する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定では、初年度は現地調査による情報収集、長期降雨データ解析、深層学習モデル構造検討等を主な計画としていた。現地調査については昨今のコロナ状況からなかなか機会が得られなかったが、各解析に必要となる長期間の気象・水文データ、GISデータ(河川、地形、土地利用等の流域情報)を入手しており、研究実績の概要に示すようにそれらの分析と流域モデル適用作業を進めることができた。初年度の作業は概ね順調に進捗したことから、次年度の作業に速やかに取り掛かることができる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで順調に研究進捗できており、次年度以降も計画に沿って進める。 R4年度の中心的な目標は豪雨時空間場を生成する深層学習モデルの構築にある。初年度の検討から、目的に向けて適用可能な深層学習手法の絞り込みはできているため、その中から手法を選択して具体的なモデリングに移行する。年度内にプロトタイプ作成まで進捗させ、対象地区の観測データとの比較検証からモデル妥当性を確認する予定である。同時に、水文モデルについては降雨流出に係る最適パラメータを決定し、観測流量値と比較して洪水解析への適用性を評価する。その後、生成される降雨データ入力のための整備を進め、様々な豪雨状況を想定した流域内の面的なリスク評価を可能にする。リスク評価では、エリア別に危険度の指標を設定し、評価に用いることを考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ状況等の影響もあり、初年度の序中盤に計画していた現地調査のタイミングが合わず、旅費執行が困難になったため残額が生じた。 この分は次年度使用額として繰り越し、次年度の研究計画の中で主となる深層学習モデルのコーディング及び検証に係る役務発注の一部や、旅費として活用する計画である。
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