2022 Fiscal Year Research-status Report
セルロース系家畜糞尿バイオマスの新規循環プロセスの創成と黒毛和牛生産への展開
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21K05842
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
梅津 一孝 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20203581)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 畜産バイオマス / バイオプロセッシング / 再生可能エネルギー / 循環型社会 / 畜産廃棄物の利用 / 資源リサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
小規模畜産農家向けの中小規模バイオガスプラントの実用化を目指し,乳牛排泄物のメタン発酵処理の高効率化に関する検討を行った。小規模畜産農家のつなぎ飼い牛舎から排出される乳牛排泄物は乾式メタン発酵の対象となるが,麦稈等の敷料が多く混合し,その主成分であるリグノセルロースは微生物による分解率が低く,そのため有機物負荷量に反してメタンガスの回収率が低い。一般的に固形分濃度の高い原料を処理するためのバイオガスプラントの発酵方式は乾式メタン発酵が適しているが,さらに高効率化を目指すためには微生物による固形分の効率的な分解が必要と考えられる。すなわち,メタン発酵におけるリグノセルロースの分解を効率的に行うための嫌気性菌あるいは通性嫌気性菌を利用したバイオオーグメンテーションが不可欠である。乾式バイオガスプラントからの高エネルギー回収法には高温発酵が有利であるため,令和4年度では高温乾式メタン発酵残渣(消化液)を固液分離し,液分からリグニン分解嫌気性菌およびセルロース分解嫌気性菌の分離培養を試み,分離株の分解活性の確認を行った。リグニンとセルロースは生物分解される際に水素が生成される。分離株の中から比較的増殖速度が速いと考えられた10株ずつを選別し,分離株懸濁液に木片,セルロース紙片を投入して14日間の高温嫌気培養を行って水素(気泡)生成の有無を確認したが,いずれの分離株からも水素の生成は確認されなかった。従って,これらの分離株は高温乾式バイオガスプラントで実用に供することのできる機能は有していないと判断された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラボスケール実験では敷料の有機物分解率,メタン生成量は乳牛糞尿よりも高いことが示された。令和3,4年度の目標であるセルロース分解活性またはリグニン分解活性を持つ細菌の取得に関しては,分離培養の結果メタン発酵残渣からセルロース分解菌とリグニン分解菌それぞれの分離株を取得することができたものの,高分解性の分離株ではなかった。今回の実験では10 mL程度の培地を継代培養(馴養)して分離株を取得したが,高分解性の分離株を得るためには1 LスケールのAnMBR(嫌気性膜分離法)による微生物濃縮が可能な培養リアクター等を利用して馴養期間を十分に長くとった培養法が効果的であると考えられた。また,消化液分離固形分の衛生状態は良好であることが示されたが,含水率が高いため堆肥化は思うようにいかず,圧搾機などの除水のための機器の追加,あるいは固液分離後の固形分への副資材の添加が有効であると予想されたため,小規模畜産農家で利用するためには低コストな利用用途を探索する必要があると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
小規模畜産農家向けの中小規模バイオガスプラントの実用化において重要な点は運転スキルの簡略化と効率化である。近隣に畑地のないバイオガスプラントでは余剰消化液の有効利用等の問題も生じる。乾式メタン発酵では湿式と比較して処理可能な原料基質の含水率のレンジは広く,湿式メタン発酵のように加水して濃度を薄めるなどの前処理によって固形分濃度を調整する必要が少ない。しかしその分,機器の閉塞が起こりやすい,消化液の固形分濃度が高くなるため機械散布では扱いにくく家庭菜園等にも不向きであるなどの問題もある。黒毛和牛ふん尿のメタン発酵を想定し,利用先に見合った消化液の生産や機器トラブルの回避のため,消化液の性状に影響を与える要因である原料の投入方法,発酵槽の形状や加温方法,原料基質の適切な水理学的滞留日数などを提案していく予定である。 また,次年度では,神戸などの都市型有機農業については,消化液が適用可能な農・園芸作物の拡大,消化液分離固形分の利用法の検討等を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により従事できる人数に制限を設けたため人件費・謝金が発生しなかった。本年度では当該研究に専念できる人員を割り当てる予定である。
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Research Products
(3 results)