2021 Fiscal Year Research-status Report
生鮮青果物の新たな過冷却保存法の確立:長期品質保持・環境負荷低減を目指して
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21K05843
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
小出 章二 岩手大学, 農学部, 教授 (70292175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
折笠 貴寛 岩手大学, 農学部, 准教授 (30466007)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 果実 / 食品ロス / 過冷却保存 / 品質保持 / 貯蔵生理 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、密封包装したカット果実の過冷却状態での保存が日持ち向上に与える影響について測定した。具体的には、カット果実の凍結点・過冷却点およびその分布を調べるとともに、過冷却保存後の試料組織の特性を求めた。次に、過冷却保存した試料の理化学的特性を氷点付近(例えば0℃、1℃、5℃)で保存した試料と比較し、長期品質保持の可能性について検討した。今年度はこれに加えて、過冷却保存に適応しうる「果実品質と環境負荷軽減との関係」を調査するため、モモ果実の保存流通に伴う環境負荷を定量化し、そのモデル化を試みた。 その結果、カット果実はカット野菜と比較して凍結点が低く、過冷却状態の保持が、品目にもよるが、カット野菜と比較して容易であることが示された。一方、測定では試料が過冷却解消しても凍結試料と異なり、ある程度の細胞構造および細胞活性を有していたことが示唆された。これらの現象は、凍果実の凍結率、および果実特有の組織構造に起因するものと考えられた。 次に過冷却保存後の試料組織の理化学的特性は、氷点付近で保存した試料と比較して、目減り、色彩変化、軟化が有意または有意傾向で抑制された。さらに、クライマクテリック果実を用いて過冷却保存した試料は、氷点付近で保存した試料と比較して、エチレン生成を大きく抑制できることが示された。このエチレン抑制効果は、カット果実の日持ち向上を大きく向上させるため、青果物の長期品質保持に資する知見となる。 次に、モモ果実を用いて、流通時の果実品質と環境負荷との関係を調査したところ、輸送距離に伴い食品ロスが増大すること、またそのモデル化が可能であること、包装形態に伴い食品ロスが制御できること、近距離輸送の場合は、過剰な包装を施さないほうが環境負荷を軽減できることを示した。これら知見は、過冷却保存にも適応できると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、生鮮青果物の新たな温度帯でのコールドチェーンの活用を目指すものであり、「過冷却保存」に着目したものである。現在、密封包装した青果物・カット青果物の過冷却状態での保存が日持ち向上・品質保持に与える影響について以下①~③を中心に測定・検討を進めている。①保存時間、保存温度、包装内ガス濃度等が品質保持、生菌数変化、過冷却成功率に与える影響、②青果物・カット青果物の過冷却保存の最適条件および長期保存の可能性に関する定量的検討、③青果物流通時の環境負荷量や食品ロスを定量化しモデル化すること。 現時点で、①と②に関しては、これまでの知見をベースに順調に研究は進展しており、関連する論文も掲載された。③については、環境負荷量や食品ロスのモデル化に資する知見を得ており、論文投稿中である。よって研究は順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、青果物・カット青果物の保存中に、環境因子(包装内ガス濃度、過冷却温度、保存時間)が鮮度・品質、過冷却解消率、生菌数変化に与える影響についてキメの細かい測定を行い検討を深める。更に、ライフサイクルアセスメント手法による環境負荷と食品ロスの評価に向けてデータを収集し、環境に優しく高品質で長期保存できる保存条件を提案する。その後(令和5年度)は、得られた知見をもとに、生鮮青果物の長期品質保持・環境負荷低減を可能とする条件を過冷却温度、保存日数、包装形態、食品ロスの観点から整理し、新たな温度帯でのコールドチェーンの活用法を提案したい。
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Causes of Carryover |
出張が出来なかったこと、学会がオンラインで開催されたことから、旅費に計上していた予算に余剰が発生した。この分は令和4年度の旅費(学会・知見収集)として使用したい。
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