2021 Fiscal Year Research-status Report
光電子分光イメージングによる植物内二次代謝物質の局在可視化とその挙動解明
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21K05859
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
藤田 かおり 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, 主任研究員 (50435939)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | SEM-EDS / デンプン / 二次代謝物質 / 局在可視化 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、植物二次代謝物質、特に血管収縮抑制作用や抗酸化能で知られるルチン等の植物二次代謝物質を対象とし、微細組織構造観察を得意とするSEM-EDSと蛍光顕微鏡等蛍光分析を組み合わせることで、植物体上での二次代謝物質の可視化観察手法を確立することを目的とする。 ルチン等の植物二次代謝物質は、多くの食品や生薬の成分として利用されており、近年、作物の高付加価値化を目指した育種のターゲットとしても注目されている。しかしながら、食用作物において、植物二次代謝物質が植物体内のどこで、どのように、生合成されているかを可視的に捉えた研究はない。本課題ではSEM-EDSと蛍光分析を組み合わせ、植物体における二次代謝物質の可視化を目指すものである。 今年度は、ソバ子実体などの小粒穀物種子を対象に、種子内部構造観察のための最適割断手法やミクロトームなどを用いた薄片化手法、さらにコーティング試薬の最適化を行った。特に穀物種子は粘弾性の異なる複数の層状組織や澱粉粒等で構成されるため、割断や薄片化の過程において各組織が非常に剥離しやすい構造をもつ。そのため、通常の組織切片法や固定法では、組織脱落を防ぐために穀粒種子内部までの溶剤浸透が必須とされる。さらに観察時にはその溶剤除去作業等を要するため、従来法では植物体上での二次代謝物質の観察を行うことが困難であった。本課題では、両面吸着型の固定シート法を応用することで樹脂等内部浸透型の固定剤を介在させず、澱粉粒などの子実構造体の脱落を抑制する新たな組織薄層化手法の確立に成功した。これにより、子実内組織および対象物質を溶脱させることなくSEM-EDS分析に供することが可能となった。なお、本手法は従来法で分析が困難であった脆い構造体を持つ多くの穀物子実等への拡張性も期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
澱粉等が剥離しやすい穀物子実体において、樹脂等の固定剤を介在させず、澱粉粒などの子実構造体の脱落を抑制する新たな組織薄層化手法を確立した。本手法により、従来組織切片化で生じる処理残渣やサンプル損壊の無い分析が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
蛍光顕微鏡下における植物体上の二次代謝物質の蛍光情報取得および判別方法の確立として、SEM-EDSで用いた同一サンプル面を蛍光分析等他の分析に供試するための条件検討を行う。手順としては今年度確立させた切片化手法を用いて作成したサンプル相同面をSEM-EDSおよび蛍光分析に供する。蛍光分析ではコーティングに影響を受けない蛍光条件の洗い出しを行ない、植物細胞上での二次代謝物質の蛍光画像観察を実施する。また観察面から得られた蛍光情報をケモメトリクス分析で解析することで、複数蛍光物質からのルチン蛍光のデータ抽出も試みる。
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Causes of Carryover |
物品の発注時と納品時で差額が生じた為。また予算の効率的な利用により次年度への繰り越しを行った。次年度は蛍光観察を中心とした活動となる。当該繰越費用に関しては、蛍光顕微鏡観察時に必須となるフィルターや画像解析ソフト等の分析精度向上のための費用に振り替える。
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