2021 Fiscal Year Research-status Report
プラスチック生分解が引き金となる難分解添加剤放出による海洋環境汚染の加速評価基盤
Project/Area Number |
21K05870
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大田 ゆかり 群馬大学, 食健康科学教育研究センター, 講師 (40399572)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生分解性プラスチック / 難分解添加剤 / 加速評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生分解性プラスチックと同時に使用される人為起源の難分解性化学物質に着目し、基盤材料の生分解過程で放出されるこれらの分子の検出を可能とすることを目指している。 そこでまず、複数の組換え酵素やモデル細菌を使って環境中で起こり得る微生物変換を実験室で再現する。続いて、構築した生分解加速モデル系を使って海洋微生物の代謝物、代謝様式を正確に理解し、着目すべき分子構造の知見獲得へと繋げることを研究計画の要点としている。 本年度はまず比較的低分子量のポリカプロラクトン(PCL)分解活性を指標に海域から探索した8株の微生物の16SrDNA配列による系統分類学的位置の確認を行った。これらの微生物にPCLの酵素分解物を添加して培養したところ、Alcanivorax属細菌の1株ではパラニトロフェニル酢酸を基質とするエステル分解活性が誘導された。乳化プラスチックを含む寒天培地を用いたクリアゾーンテストにおいて、本菌株の高分子PCLに対する分解活性は認められなかったが、既報菌株と同様にポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の分解活性が確認された。 一方、生分解性プラスチック分解のための組換え酵素取得の一貫としてバチルス属細菌のもつPBAT hydrolase発現用コンストラクトの構築を行った。 また更にポリ乳酸(PLA)の酵素分解物を海水で希釈した液をモデルとして、分解途中のオリゴマーを濃縮回収する条件を検討した。PLAオリゴマーは酸性条件下で固相抽出により回収することが可能であったが、オリゴマーのサイズにより安定性に違いがあることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生分解加速モデル系構築へ向けて、生分解性プラスチック分解微生物・酵素の取得、モデル分解物を低濃度に含む海水からの回収実験など、多項目の実験に着手できた。
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Strategy for Future Research Activity |
PHA分解活性が見られた菌株の持つPoly(3-hydroxybutyrate) depolymeraseの発現コンストラクトを作成する。その他にも文献調査を進め、生分解プラスチック分解酵素のコレクションを強化する。 また引き続き、分解中間体の抽出・前処理・分析の格段階において、手法の最適化を行う予定である。
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Causes of Carryover |
質量分析解析用PCの購入を予定していたが、学内の稼働率の低いPCを共有使用することができたため、本年度の支出を抑えることができた。また購入予定のGCMS解析ソフトについても、Heガス不足により稼働を停止していた学内共同利用GCMS装置が再稼働し始めたことにより、本課題で個別に用意する必要がなくなった。 これにより確保できた予算は、共同利用の分析機器を頻繁に活用し、分析数を増加させるための予算として使用する。
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