2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of year-round grazing system of meat goat in tropical grass - overcoming parasitic infection -
Project/Area Number |
21K05877
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
波平 知之 琉球大学, 農学部, 助教 (30792478)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 肉用ヤギ / 捻転胃虫 / EPG / 糞中DNA / 定量PCR / 暖地型牧草 / 放牧 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.フィールド実態調査では、沖縄県八重山地域の石垣島と西表島の農家3件の調査を実施した結果、飼養管理方法によって捻転胃虫感染症の感染率に違いが認められ、平飼い管理で飼養密度が高い場合に感染率が高く、放牧管理でも飼養密度が極めて低い場合には捻転胃虫感染はほとんど認められなかった。その一方で、従来の高床式畜舎管理ではコクシジウム症の感染率が極めて高くなっていたことから、調査農家においては飼養衛生管理の改善が必要であることがわかった。2.定量PCR法にいよる簡易同定法の検討では、糞便中のDNAを抽出し、畜種への病原性を有する捻転胃虫と乳頭糞線虫の同定が可能となった。また、寄生虫感染したヤギ糞から、感染寄生虫種における虫卵数の定量化が確認でき、従来の形態観察による虫卵数との整合性を確認することができた。3.各種飼料添加剤の駆虫効果の検討では、フルモキサール散よりも塩酸レバミゾールの方が約50日間の持続的な駆虫効果を示していた。また、寄生虫感染に対する抵抗性(薬の効果)は、個体による違いが確認でき、長期に駆虫を必要とする個体とそうでない個体とがはっきりと区別された。飼料添加剤による駆虫を1年間(4回)継続したことで、飼養しているヤギ群の血液性状が正常値に戻りつつあり、増体を示すなどの健康状態の回復が認められた。4.異なる放牧条件下での放牧試験では、ヤギ用の電気防柵を設置し、牧区配置などの放牧試験の準備を終了することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.フィールド実態調査(達成率40%)初年度は、沖縄県八重山地域の石垣島と西表島の農家3件の調査を実施することでき、肉用ヤギの飼養管理方法の違いによる寄生虫感染症の罹患率の違いを見出すことができた。2.定量PCR法にいよる簡易同定法の検討(達成率80%)初年度は、継続して採取・保管しているヤギの糞便から、糞便中に含有する寄生虫卵のDNAを抽出することができた。また、プライマーを設計し、畜種への病原性を有する捻転胃虫と乳頭糞線虫の同定が可能となるまでの技術を確立することができた。3.各種飼料添加剤の駆虫効果の検討(達成率60%)昨年度から継続している2年目の投薬実験から、フルモキサール散よりも塩酸レバミゾールの方が約50日間の持続的な駆虫効果を示すことが明らかとなった。また、寄生虫感染に対する抵抗性(薬の効果)は、個体による違いが確認でき、長期に駆虫を必要とする個体とそうでない個体とがはっきりと区別されたがその要因は明確にできずにいる。2年目には、飼料添加剤の駆虫効果の再実験を実施し、計3年間の実用技術の論文化に向けたデータ解析を行う。4.異なる放牧条件下での放牧試験(達成率20%)初年度は、当初計画の通り、電牧購入などを進めてヤギ用放牧地の整備を行った。2年目から放牧試験を進めることから、初年度の研究計画はおおむね順調であると自己評価した。 以上のことを自己評価で平均すると、現在までの研究課題の達成率は50%であることから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.フィールド実態調査:調査対象農家(10件以上)を広げ、より詳細な現場データの蓄積および解析を進めることで本課題について論文化を進め、できれば3月末までに論文を投稿したい。中間報告として、日本暖地畜産学会と沖縄畜産研究会に口頭発表する予定である。 2.定量PCR法にいよる簡易同定法の検討:論文化するための準備を行っているので、今年度中に論文化する予定である。 3.各種飼料添加剤の駆虫効果の検討:飼料添加剤の駆虫効果の再実験(反復)を実施し、計3年間の駆虫実験の結果をまとめて、実用技術の論文化に向けたデータ解析を行う。中間報告として、日本暖地畜産学会と沖縄畜産研究会に口頭発表する予定である。日本暖地畜産学会と沖縄畜産研究会に口頭発表する予定である。 4.異なる放牧条件下での放牧試験:ヤギの嗜好性の偏りを明らかにするため、飼養試験による暖地型牧草の嗜好性試験を行い、その結果をもとに放牧試験を実施する予定である。本課題の論文化は、3年目を予定している。
|
Causes of Carryover |
1)当初予算計上していたヤギ舎設置費(100万円)だったたが、価格高騰による予算上の都合と法律上の課題により高額物品の購入を急遽中止し、撤去可能な簡易山羊舎の設置物に係る物品購入により執行経費が削減された。次年度以降に放牧試験に係る一部整備に予算を執行する計画である。2)旅費に関しては、コロナ感染状況によって、コロナ蔓延防止処置が解除される令和4年3月中旬までフィールド調査を延期していたことも次年度使用額が生じた理由である。令和4年度の4月から、フィールド調査に伴う出張を実施する計画である。3)DNA実験に関する委託分析業務を自前で実施したため、機器使用料のみの執行により、次年度以降の使用額が生じた理由である。
|