2023 Fiscal Year Annual Research Report
海産甲殻類を用いたフッ素系殺虫剤の汚染実態解明と環境リスク評価
Project/Area Number |
21K05878
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Research Institution | Ariake National College of Technology |
Principal Investigator |
内田 雅也 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (80575267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 弘志 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (90403857)
平野 将司 東海大学, 農学部, 特任准教授 (20554471)
水川 葉月 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (60612661)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 海産甲殻類 / アミ / 農薬 / フッ素系殺虫剤 / 生態毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、海域におけるフッ素系殺虫剤の汚染実態と海産甲殻類アミに対する毒性影響を評価した。今年度は、これまでの成果で明らかとなったFip-sulfide(Sf)曝露により海産甲殻類アミで観察された脱皮のかく乱や成長阻害のメカニズムを分子レベルで明らかにするため、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行った。その結果、GO解析では脱皮に関与するキチン結合やクチクラ構成成分などに関与するGOが検出された。これまでの報告でFip類の曝露で体長および頭胸甲長の減少に加えて、脱皮数が有意に増加することを明らかにしていることから、Fip-Sfは脱皮に関与するキチン結合/クチクラ構成成分などに作用することで脱皮のかく乱を引き起こすことが示唆された。さらにパスウェイ解析の結果、GABAergic synapseがエンリッチなパスウェイとして検出された。FipはGABA受容体に作用し、神経興奮抑制を阻害することで殺虫効果を発揮することが報告されていることから、Fip-Sfは、Fipと同様にGABA受容体に作用することが示唆された。以上の結果は、海産甲殻類を対象として、Fip-Sf曝露による脱皮かく乱作用/成長阻害メカニズムを明らかにした最初の報告である。これらの知見は、農薬の毒性メカニズム解明やリスク評価に貢献することが期待される。研究期間を通じて、福岡県内の河川や河口域におけるFipおよびその分解物の汚染実態と季節変動を明らかにした。また、アミを用いた生体影響評価では、Fipおよび分解物について成長・成熟試験を実施し、検出された濃度と同程度の濃度で成長・成熟に影響することや脱皮かく乱作用やその作用メカニズムの一端を明らかにした。以上の結果から海域におけるフッ素系殺虫剤の汚染実態に関する知見を得ることができた。
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