2021 Fiscal Year Research-status Report
全国農薬生態リスクマップの構築とリスク変動の可視化
Project/Area Number |
21K05882
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
永井 孝志 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (10391129)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 農薬 / 生態リスク / 複合影響 / 環境DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は以下3つのサブテーマに分けて実施している。 ① 複数農薬の複合影響を考慮した全国生態リスクマップの構築:生態リスクを評価する対象地点として全国の河川環境基準点のデータを整備した。具体的には位置情報と水質測定値、河川流量、流域内水稲作付面積、農薬普及率を整理した。評価地点毎にこれらの整理した値を農薬濃度予測モデルに入力して2010年度ベースの農薬濃度(67種類)を計算した。得られた各農薬の予測濃度をこれまでに開発した累積リスク評価ツールNIAES=CERAPに入力して生態リスクを定量的に評価し、日本地図上に表示するプログラムを作成した。 ②生態リスクの経年変化や使用農薬を変えた場合の生態リスクの変化の可視化:今年度は実施なし ③評価されたリスクの大きさと実際の水生生物群集との比較検証:環境DNAを用いた水生生物群集の評価方法についての検討を行った。令和3年度は予備的調査として、人為汚染源の無い河川水と周辺に水田が多く農薬濃度が高くなりやすい河川水の2種類のサンプルを用いて使用するプライマーを検討した。まず殺虫剤については水生節足動物に対して毒性が強いため、水生昆虫をターゲットとした。動物全般のDNAマーカーとして実績のあるミトコンドリアチトクロームオキシダーゼサブユニットI領域を増幅させるプライマーとしてIntF-HCOmRとfwhF2-EPTDr2nの2セットを比較したところ、後者の優位性を確認した。除草剤については植物に対して毒性が強いため、河川付着珪藻をターゲットとした。真核生物全般のDNAマーカーとしての実績のある18SリボソームRNA領域を増幅させるプライマーとして1422f-1642rを用いたところ、捕獲調査に比べて十分な検出力を持つと判断された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サブテーマ①の全国生態リスクマップの構築に関しては、地点のデータ整備、農薬濃度予測と生態リスク評価、マッピングまでが一通り終了し、順調に進んだと判断される。サブテーマ③においても、予備的調査において使用するプライマーの検討が終了し、次年度以降の本格的な調査が進められる状況になった。
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Strategy for Future Research Activity |
サブテーマ②生態リスクの経年変化や使用農薬を変えた場合の生態リスクの変化の可視化:2020年現在から、農薬の使用実態がおおむね把握可能である1990年までさかのぼり、30年間の全国生態リスクがどのように経年的に変化してきたかを、令和3年度に実施した手法でリスクマップとして可視化する。過去における農薬の使用量は各年の農薬要覧、使用方法は当時の農薬便覧などの資料を活用してデータを整理する。 サブテーマ③評価されたリスクの大きさと実際の水生生物群集との比較検証:茨城県内の環境基準点の中から①の結果を用いて高リスク地点から低リスク地点まで調査地点をそれぞれ選定し、水稲用農薬の河川水中濃度が高くなる5-6月にかけて環境DNA法を用いた生物群集の調査を行う。
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Causes of Carryover |
環境DNA法による生物調査のプライマー選定における試行錯誤の初期段階でよい結果が得られたため分析費用が予定を下回った。次年度はその分調査地点を増やして分析費用に充てる。
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