2021 Fiscal Year Research-status Report
土壌細菌アグロバクテリウム に近縁な耐塩性根粒菌の可能性について
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21K05885
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
馬場 晶子 (笠井晶子) 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源研究センター, 上級研究員 (50414933)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 耐塩性根粒菌 / 南西諸島 / Vigna marina (ハマササゲ) / Rhizobium属 / 砂浜適応 / 全ゲノム解析 / 遺伝子の水平伝搬 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) ハマササゲ根粒菌の環境ストレス耐性:現在までに、西表島、石垣島、沖縄本島、屋久島に生息するハマササゲ根粒より細菌を単離、耐塩性の弱いBradyrhizobium属、中度の耐塩性を持つSinorhizobium属、強耐塩性のRhizobium属と非常に多様な根粒菌が共生していることを明らかにしてきた。生息域が砂浜であることから、ハマササゲ根粒菌は、塩以外の環境ストレス、特に温度ストレスに耐性を持つことが推測された。そこで、通常の培養温度から10℃高い38℃での増殖を調査、耐暑性を評価したところ、全てのSinorhizobium属根粒菌が強い耐暑性を示した一方で、Rhizobium属根粒菌では供試株毎に差異があり多様性を示した。さらに、15℃における増殖を調査、耐冷性についても評価したところ、Sinorhizobium属根粒菌のほとんどが増殖を抑制されたにも関わらず、Rhizobium属根粒菌は強い耐冷性を示した。以上の結果から、強耐塩性Rhizobium属ハマササゲ根粒菌の中に、耐暑性・耐塩性も強いマルチストレス耐性菌のクラスターが存在することが分かった。 2) ハマササゲ根粒菌の全ゲノム解析:当初の研究計画では、現有するハマササゲ根粒菌について、多座位配列タイピング(MLST)解析を行い、3属間の共生関連遺伝子の相同性を解析する 予定であった。先進ゲノム支援課題に採択されたことからこれを変更、ロングリード(ナノポア)とショートリードの2手法で、環境ストレス耐性を評価した3属11株についてゲノムを完全解読した。この結果、1で述べたマルチストレス耐性根粒菌クラスターが第2染色体としてlinear chromosomeを持っていることが明らかとなり、土壌細菌アグロバクテリウムの近縁種であることが確実となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハマササゲ根粒菌間における共生関連遺伝子の水平伝搬の研究は、先進ゲノム支援を受けたことにより当初の計画に比べて大きく進展した。根粒菌のストレス耐性についても、計画外であった耐冷性についても調べた結果、耐暑性の結果と合わせてハマササゲ根粒菌の砂浜適応について考察可能となり研究が深化したと考える。一方で、異種のハマササゲ根粒菌による混合接種試験の結果は、現時点ではネガティブであり、接種条件の検討など根本的な見直しを必要とする可能性がある。大幅に進展した課題がある一方で、今後の難航が予想される課題もあることより、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
解読した全ゲノム配列について、新種記載のための系統解析と共生関連遺伝子の水平伝搬についての考察などを進める。また、ハマササゲ根粒菌について未探索・未採取であった奄美群島からの根粒菌の採集・解析を進める。 混合接種試験について、根粒菌の生息地情報およびゲノム解析情報などを考察して、接種条件等について再検討する。
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Causes of Carryover |
先進ゲノム支援を受けることができたため、実験補助者の人件費を当初の予定より抑えることができ、残額が生じた。論文投稿時の英文校閲代および掲載料金として使用する予定である。
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