2023 Fiscal Year Research-status Report
土壌細菌アグロバクテリウム に近縁な耐塩性根粒菌の可能性について
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21K05885
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
馬場 晶子 (笠井晶子) 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源研究センター, 上級研究員 (50414933)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ハマササゲ根粒菌 / アグロバクテリウム / 線状染色体 / 全ゲノム解読 / 進化系統解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
4属11菌株(Bradyrhizobium 属細菌1株、Sinorhizobium 属細菌4株、Rhizobium 属細菌3株、Agrobacterium属3株)から構成されるハマササゲ根粒菌について、全ゲノム塩基配列に基づく系統解析と種同定を進めた。特に、第2染色体として線状染色体を持つAgrobacterium属の3菌株については、線状染色体末端構造および進化系統的なポジションと末端構造の相関を明らかにすることを目的に、Agrobacterium属標準菌株など20菌株を国内及び海外の保存機関から取り寄せ、ハマササゲ根粒菌と同様にNanoporeロングリードとIlluminaショートリードによるde novo全ゲノム解読を実施して、線状染色体末端配列の比較解析を行った。 全ゲノム塩基配列から81個のハウスキーピング遺伝子を抽出して分子系統解析を行った結果は、Agrobacterium属の3菌株は、いずれもGenomovar 7に属するAgrobacterium deltaense あるいはAgrobacterium legmiumと近縁であることを示しており、ANIが95%以上であることから上記2種と同種であると結論づけた。さらに、ハマササゲ根粒菌とAgrobacterium属標準菌株など23菌株の線状染色体末端配列の比較から、26bpのコンセンサス配列を決定した。また、線状染色体を持たないRhizobium 属ハマササゲ根粒菌(3株)の1菌株については、Agrobacterium属とRhizobium 属の境界に位置することが分かり、線状染色体獲得イベントについて新規の知見を与える可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R3・R4と2年続けて先進ゲノム支援を受けることができ、ハマササゲ根粒菌についてのde novo全ゲノム解読が終わり、種同定のための系統解析を高い精度で行うことができた。この過程で、Agrobacterium属細菌における線状染色体獲得イベントの進化系統的な解析というテーマが派生、Agrobacterium属標準菌株など23菌株についてもde novoでの全ゲノム解読を進め、Agrobacterium属ハマササゲ根粒菌3株と共に線状染色体末端配列の精緻な情報を体系的に取得、末端配列の比較から、26bpのコンセンサス配列を決定することができた。 ゲノム解析や分子系統解析が飛躍的に進んだ一方で、当初に計画していた異種のハマササゲ根粒菌による混合接種試験については、初年度に得たネガティブな結果について追求・改善する予定を実施できなかった。 予想以上に進展したテーマと遅延を否めないテーマができてしまったので、2つを合わせておおむね順調であるとした。
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Strategy for Future Research Activity |
R5年度は、本研究で得られた成果について2報の論文、1)ハマササゲ根粒菌の根粒系性能とストレス耐性 2)ハマササゲ根粒菌の全ゲノム塩基情報に基づく種同定と線状染色体末端配列の解析、を執筆・投稿する予定である。 また、本研究で明らかとなった線状染色体の末端のコンセンサス配列は、末端構造を生成・維持するテロメアーゼの認識配列であると考えられる。今後、コンセンサス配列とその周辺配列、テロメアーゼ遺伝子(telA)の塩基配列などを用いて比較系統解析を行うことにより、Agrobacterium属細菌における線状染色体獲得イベントについて進化系統的な考察を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究成果の取りまとめと論文作成が遅れたので、そのための予算を次年度使用とした。 今後の研究の推進方策に記述した通り、R5年度は本研究で得られた成果を2報の論文にまとめる予定なので、繰越した金額はこれに使用する計画である。
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