2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K05887
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
出口 善隆 岩手大学, 農学部, 准教授 (40344626)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | イノシシ / 土地選好 / 広葉樹林 / 日周活動 / GPS |
Outline of Annual Research Achievements |
1)生活痕跡調査をもとにした土地選好性調査 岩手県雫石町において積雪期にイノシシの足跡を追跡し、生活痕跡調査および糞内容物調査を行った。生活痕跡調査で得られた掘り返し跡の分布の有無データを目的変数、調査区の林相、調査日の雫石町の積雪深および調査日の年を説明変数として一般化線形モデルを構築した。糞内容物調査では出現頻度とポイントフレーム法による糞内容物中割合を求めた。その結果、ベストモデルではコナラ・ミズナラを主とする広葉樹林・混交林およびスギ林が有意に正に、積雪深が有意に負に影響する説明変数として選択された。糞内容物では堅果類がすべての糞から出現し、糞内容物中の割合も78.5%と最も高かった。これらのことから、イノシシは積雪期には堅果類を利用できる広葉樹林を好むことが示された。また、一般化線形モデルの結果から、積雪深が深くなると掘り返しが困難になり、落葉広葉樹と比べて積雪深が浅い常緑針葉樹林へと採食場所を移動させると考えられた。また、同調査地において自動撮影カメラを用いて、イノシシの日周活動性の推定を行った。自動撮影カメラを調査地内に9台設置した。その結果、春季から秋季にかけては日没前後に撮影回数のピークがあったが、冬季では日中に撮影回数のピークがあり、昼行型に変化した可能性が示された。イノシシは東北地方北部の冬季の特徴である低温や積雪に対し,日周活動性を変化させることで適応している可能性が考えられた。 2)GPSを用いた土地選好性調査 イノシシを捕獲、GPSを装着し、放獣し、GPSでは、3時間に1回位置を記録する予定であった。新型コロナウイルス感染症の影響で遅れていたGPS首輪も輸入できき、罠の購入等、イノシシ捕獲に向けた準備を行った。クマの錯誤捕獲を避けるために、クマの活動が低下する12月の捕獲を予定したが、例年にない早期の大雪により、今年度中の捕獲を断念した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「生活痕跡調査をもとにした土地選好性調査」では、順調に調査が進行し、積雪期の土地選好性の推定を行うなど、当初の計画以上に進展している。しかし、「GPSを用いた土地選好性調査」では、例年にない早期の大雪により、今年度中の捕獲を断念した。そのため、次年度における捕獲準備を進めるとともに、関係者による打ち合わせ等を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後もイノシシの生活痕跡調査をもとにした土地選好性調査を継続して行い、土地利用に影響を与える堅果類の豊凶や積雪深などの調査を行い、土地選好性の変動を明確にする予定である。また、イノシシを捕獲、GPSを装着し、放獣を行い、位置データをもとに、イノシシの土地利用に対する土地選好性を明らかにする予定である。
|
Causes of Carryover |
例年にない早期の大雪により今年度中のイノシシの捕獲を断念したため、麻酔作業等の委託経費の支出がなかったため。次年度に、イノシシを捕獲、GPSを装着し、放獣を行い、位置データをもとに、イノシシの土地利用に対する土地選好性を明らかにする予定である。
|
Research Products
(2 results)