メタボローム解析を用いた黒毛和種牛の代謝と枝肉形質の関連解析

2022 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K05891
• Research Institution: Kyoto University
• Principal Investigator: 友永 省三 京都大学, 農学研究科, 助教 (00552324)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: ワイドターゲットメタボロミクス / アンターゲットメタボロミクス / 黒毛和種 / 枝肉形質 / 脂肪交雑 / 血漿 / アミノ酸 / 短鎖脂肪酸

Outline of Annual Research Achievements

本年度は、昨年度に入手した黒毛和種肥育牛の血漿および出荷時の枝肉成績を用いた更なる検討を行った。具体的には、この血漿を用いたガスクロマトグラフ質量分析計を用いたアンターゲットメタボロミクスおよびワイドターゲットメタボロミクスから、枝肉成績と関連する低分子代謝物質を探索した。その結果、昨年度よりも多くの低分子代謝物質と枝肉成績との関連を見出すことができた。その中で、当初計画していたアミノ酸代謝だけでなく、脂肪酸の代謝との関連も見出すことができた。また、昨年度に確立したtert-ブチルジメチルシリル化による定量分析系において、他の分析系を用いた分析結果と比較して詳細にチェックした結果、分析系の特徴を把握することができた。たとえば、本分析系ではアルギニンを定量分析することが難しく分析対象からは除外すべきであることが明らかとなった。更に、昨年度に着手した、夾雑成分の除去に有用な固相抽出を自動で行うことができる「固相誘導体化法」において、tert-ブチルジメチルシリル化法を用いる場合に有用なメソッドの改良も行うことができた。以上より、tert-ブチルジメチルシリル化による定量分析系ではウシ血漿において多検体を高精度に分析することが可能となった。更に、血中に微量に含まれる短鎖脂肪酸の定量分析系も確立することができた。これら成果に基づき、当初よりもより多くの検体においてより多くの代謝物の分析が可能となったことから、当初予定していた月齢の前後の血漿も検討することを着想し取り組むこととなった。以上より、本研究によって得られる成果の信頼性向上が期待される。

Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

代謝物の網羅的分析系の結果に基づき、幾つかの代謝物の定量分析系の確立を行うことができたことは当初の計画以上に進んでいる部分である。また、多検体サンプルの分析が可能となる自動前処理および誘導体化についても目途がたったことは、枝肉形質の予測指標として用いることができないか、検討する価値がある。

Strategy for Future Research Activity

既に入手している黒毛和種肥育牛の血漿メタボローム解析を進める。定量分析系が当初の予定よりも多くなったことから一部サンプルの再分析も視野にいれる。これまでの成果に基づき、新規分析系を活用したターゲット分析の条件検討から取り組む。得られた結果から、枝肉成績と関連する分子レベルの作用機構に関する仮説を立てることができた場合、培養細胞を用いた検討を行う。使用可能な分析系が当初よりも優れた精度および感度を有することから、当初予定していたアミノ酸代謝だけでなく、他の代謝経路（ビタミンや脂肪酸が関連する代謝など）も含めた仮説の立案を目指す。また、多検体分析可能となったことから、現場レベルで適用可能な枝肉形質の予測指標が確立できないか検討する。

Causes of Carryover

誘導体化と固相抽出の自動化である「固相誘導体化法」を用いた結果、消耗する試薬の節約効果につながったことから次年度使用額が生じることとなった。ただし、当初の実験計画にはなかった新たな分析系を用いるために翌年度は追加費用が発生することとなったことからそこに使用する予定である。