2022 Fiscal Year Research-status Report
インスリン様成長因子結合タンパク質遺伝子の発現調節による革新的食肉生産技術の開発
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21K05892
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
本田 和久 神戸大学, 農学研究科, 教授 (40335427)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | IGF / IGFBP / 骨格筋 / ニワトリ |
Outline of Annual Research Achievements |
ニワトリ骨格筋におけるIGFBP-1の遺伝子発現は絶食により有意に増加すること、およびその効果は骨格筋量の多い肉用鶏よりも卵用鶏において顕著であったことから、IGFBP-1は骨格筋の成長に対して抑制的に働く可能性が示された。そこで、ニワトリ胚由来筋管細胞におけるIGFBP-1のsiRNAによるノックダウンが、IGF-1の働きに及ぼす影響について調べた。その結果、IGF-1によるatrogin1遺伝子(骨格筋タンパク質分解の指標の一つ)の発現抑制効果は、IGFBP-1の遺伝子発現のノックダウンによって減弱する可能性が示された。加えて、IGF-1は、その特異的受容体であるIGF-1受容体の遺伝子発現を抑制することが示唆された。これらの結果から、肉用鶏における産肉量の増加に骨格筋IGFBP-1産生能の低下によるIGF-1の骨格筋タンパク質分解の抑制が関与する可能性、および血中IGF-1濃度の低下によるIGF-1の働きの低下は、骨格筋におけるIGF-1受容体遺伝子発現の上向き調節によって一部補填される可能性が示された。また、IGFBP-1の遺伝子発現は血中遊離脂肪酸濃度が上昇する絶食条件下で上向き調節されるが、ニワトリ胚由来筋管細胞においては、培養液へのオレイン酸の添加によって、その遺伝子発現は下向き調節されることが明らかになった。このことから、その機構については不明であるが、ニワトリ骨格筋においては、脂肪酸が豊富な条件下でIGFBP-1の遺伝子発現が下向き調節される機構が存在する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニワトリ骨格筋におけるIGFBP-1の役割の一端を明らかにした。また、新たにIGF-1受容体が、血中IGF-1の変動に応じて逆向きの変動を示すこと、脂肪酸によって、IGFBP-1の遺伝子発現は意外にも下向き調節されることを示唆した。しかしながら、IGFBP-2については、現在のところ有効なノックダウン効果を示すsiRNAが得られていないため、実験条件を試行錯誤中である。
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Strategy for Future Research Activity |
IGFBP-1のノックダウンによるIGF-1シグナリングの変化を調べる。また、IGF-1シグナリングに及ぼすIGFBP-2のノックダウンの効果を調べる。更に、IGF-1受容体の発現変動の生理的重要性について調べる。
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