2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on the regulation of SPAM1-ARSA complexes associated with the reduction of polyspermy during in vitro fertilization of porcine oocytes
Project/Area Number |
21K05894
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
建本 秀樹 琉球大学, 農学部, 教授 (70227114)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ブタ体外受精 / 透明帯 / エラグ酸 / 抗ヒアルロニダーゼ活性 / 多精子受精 / 先体反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブタ体外受精(IVF)時には多精子受精が高頻度で起こり,繁殖工学技術の活用に対して大きな障害となっている。そこで本研究では糖鎖を持たず強い抗ヒアルロニダーゼ作用を有するエラグ酸を用いて,ブタの多精子受精の抑制にヒアルロニダーゼ活性の阻害効果が関与しているか否かについて検討した。 エラグ酸(0,1,2.5,5,および10 ug/mL)を培地に添加しIVFを行ったところ,5 ug/mLのエラグ酸は精子侵入率に悪影響を及ぼさず多精子受精率のみを顕著に抑制した。そこで,これまでヒアルロニダーゼ阻害作用を有すると報告されているアピゲニンを用い,5 ug/mLにおいてエラグ酸とアピゲニンのヒアルロニダーゼ活性阻害率を比較した。その結果,エラグ酸はアピゲニンと比較し著しく高い抗ヒアルロニダーゼ作用を示した。さらに,5 ug/mLのエラグ酸とアピゲニンを添加しIVFを行ったところ,エラグ酸処理区のみで多精子受精の有意な抑制が検出された。次に,エラグ酸処理が受精時の精子-透明帯間の相互作用に及ぼす影響を調べた。エラグ酸処理が透明帯への結合精子数と透明帯の硬化に対して影響を及ぼすことは無かったが,透明帯結合精子の先体反応誘起率がエラグ酸処理に伴い有意に減少した。そこで,精子の先体反応誘起には至適量の活性酸素種が必要なことからエラグ酸とアピゲニンの抗酸化能を比較したところ,エラグ酸の抗酸化能はアピゲニンより有意に低かった。 以上の結果から,IVF培地へ添加した5 ug/mLのエラグ酸は,抗酸化能には関係なく,その強い抗ヒアルロニダーゼ作用により透明帯へ結合した精子の先体反応誘起を阻害させる機序を介して,多精子受精を効果的に抑制することが明らかとなった。したがって,ブタIVF時の多精子受精を抑制する際には,精子ヒアルロニダーゼ活性の制御が重要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブタに対して繁殖工学技術を有効に活用する上において,大きな妨げの1つとしてIVF時に高頻度に起こる多精子受精が挙げられる。特に,ブタは他の動物種に比べてIVF時の多精子受精が高率である。過去にも多精子受精を低下させるための様々な研究が行われているが,これらの研究結果の多くは,個々の研究者の研究環境や研究条件によって大きく影響を受けることが指摘されており,研究環境による影響を極力抑えた多精子受精を効果的に抑制する新しいIVF法を確立することは非常に重要である。 そこで本研究では,強い精子ヒアルロニダーゼ阻害作用を有するエラグ酸に着目した。これまでの我々の研究で,コンドロイチン硫酸Aの徹底水解から得られたオリゴ糖であるChSAOがブタ精子のヒアルロニダーゼを阻害し,IVF時の多精子受精を顕著に抑制することを明らかにした。しかし,ChSAOは4糖の糖鎖を持ったオリゴ糖のため,抗ヒアルロニダーゼ活性だけで無く,精子-透明帯間の糖鎖結合に対して何等かの影響を及ぼし,多精子受精を抑制している可能性が考えられた。したがって,糖鎖を有さず,強い抗ヒアルロニダーゼ活性を持つエラグ酸のIVF培地への添加により多精子受精が効果的に抑制された本研究結果から,強い抗ヒアルロニダーゼ作用により透明帯へ結合した精子の先体反応誘起を阻害させる機序を介して,多精子受精を効果的に抑制することが明らかとなった。しかも,エラグ酸処理で多精子受精を抑制された卵では,その後の分割率と胚盤胞期胚への発生率が無処理区に比較して有意に増加し,割球毎におけるアポトーシス誘導(TINEL陽性)も著しく低下した。すなわち,ブタIVF時の多精子受精を抑制する際には,精子ヒアルロニダーゼ活性の制御が重要であると考えられ,本研究を遂行するに当たって,研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最近の報告から,ヒト精子先体内に存在する分子シャペロンHSPA2がarylsulfatase A (ARSA)とSPAM1の複合体を調整していることが報告された。精子ヒアルロニダーゼ活性を有するSPAM1は,受精能獲得前は精子表面に発現しており,卵母細胞を取り囲む卵丘細胞の分散に関わっている。そして,受精能獲得の完了と共にARSAとSPAM1が部分的に反転することが明らかとなった。したがって,エラグ酸処理によってブタ精子ヒアルロニダーゼ活性を阻害することは,SPAM1とARSAの反転に何等かの影響を及ぼすことでARSAが関与する精子先体反応誘起を減少させ,さらにこれが精子の透明帯への二次結合に影響を与え,最終的に多精子受精を抑制した可能性がある。そこで,ブタIVF時における透明帯構成糖タンパク質の糖鎖の硫酸化修飾が多精子受精に及ぼす影響を検討する上で,体外成熟卵の透明帯をsulfatase処理することで,精子ARSAと透明帯構成糖タンパク質の硫酸化糖鎖末端との結合を抑制することが多精子受精抑制を引き起こすか否かを調べる。さらに,多精子受精の抑制を目的とした透明帯構成糖タンパク質の硫酸化糖鎖に注目した研究は未だ詳細には検討されていない。そこで,今後の研究では,精子ARSAの透明帯構成糖タンパク質の硫酸化糖鎖末端への結合を抑制するARSAブロッキングペプチドを用いてブタIVF時の多精子受精抑制効果についても検証する。 また,今後の研究では,SPAM1のヒアルロニダーゼ活性をエラグ酸で阻害し,同時に,ARSAの透明帯構成糖タンパク質の硫酸化糖鎖末端への結合を阻害することで,精子先体のSPAM1-ARSA複合体と透明帯との作用機序を介した多精子受精を効果的に抑制する新しいIVF法の確立を目指す。
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Research Products
(2 results)