2022 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of stem cell niche in developing ruminal epithelial tissue
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21K05900
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 裕 北海道大学, 農学研究院, 助教 (10793846)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芳賀 聡 東北大学, 農学研究科, 准教授 (90442748)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ウシ / ルーメン上皮細胞 / 組織発達 / 制御因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウシの反芻胃(ルーメン)は離乳期をさかいに急速に発達するが、その細胞的・分子的な機序には不明な点が多い。本研究ではルーメン上皮基底層に局在する増殖細胞が、ルーメン組織の発達に直接的に関与すると考え、その増殖や分化を制御する組織内の微小環境(ニッチ)の存在を仮定して、その解明を目指した。 本年度はレーザーマイクロダイセクション(LMD)により顕微分取した離乳後個体のルーメン基底細胞および上層細胞について、mRNA-seqによりトランスクリプトーム解析を行い、基底細胞の機能的特徴を把握すると同時に、それを調節するシグナル経路を検討した。前年度の行ったLMDではRNAが分解されていたが、組織切片の染色方法やRNase阻害剤の見直しにより、質・量ともにmRNA-seqが可能なRNAを抽出することが可能となった。mRNA-seqの結果から、基底細胞では細胞周期関連遺伝子の発現が高く、盛んな細胞増殖が起きていることが裏付けられた。基底細胞では細胞外マトリックスに関連する遺伝子が濃縮されており、特に細胞増殖をサポートするラミニン-インテグリン経路が検出された。免疫染色によりこれらの一部は基底細胞に局在することが確認された。また、上層細胞においては上皮の角質化に関与するTGFbが高発現しており、角質層形成への関与が示唆された。 前年度の研究結果から、ルーメン上皮細胞の増殖を制御するニッチ因子としてラミニンや各種の成長因子が示唆されていたが、本年度のトランスクリプトーム解析によりそれが裏付けられた。次年度は培養ルーメン上皮細胞を用いて、これらのニッチ候補分子の直接的な生理作用を明らかにすることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はまず、前年度に完了できていなかったLMD後のRNA抽出技術の改良に取り組んだ。染色剤や染色工程、RNase阻害剤などの細かい条件検討に時間を要したが、結果としてシーケンシングが可能なRNAを採取することができた。続くmRNA-seqでは前年度の結果を裏付ける発現変動遺伝子や濃縮経路が検出され、一部の因子は免疫染色により組織内局在を確認することができた。SCFAによるニッチ候補分子の発現調節については本格的な検討ができていないが、次年度のルーメン上皮細胞培養系を利用して同時に検討したい。以上のように、本研究の鍵となるLMDおよびmRNA-seqによるニッチ候補分子の洗い出しと局在解析が完了したことから、研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は培養ルーメン上皮細胞を用いたニッチ候補分子の生理作用の検討を行う。ルーメン上皮の培養方法は過去の研究にて利用しているが、長期間の継代培養ができなかったため、長期培養性を改善するために培養の基礎条件を改良してから本実験を行う。その後、培養上皮細胞に各種ラミニンまたはTGFbなどを処理して、細胞増殖アッセイにより増殖性への作用を検討する。培養細胞からはRNA抽出も行い、RNA-seqまたはqPCRにより増殖関連遺伝子の発現変化も検討する。同時に細胞分化マーカーの発現変化も検討し、細胞分化への影響も検討する。また、培養試験ではSCFAの処理も行い、ラミニン系やTGFb系に関連する遺伝子の発現への影響を検討する。これら一連の実験から、SCFAにより発現が制御され、なおかつ基底層細胞の増殖や未分化性を制御する候補分子をルーメン上皮組織におけるニッチ因子として結論づける。
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Causes of Carryover |
細胞培養試験のために予算を計上していたが、一部実施することができなかったため次年度使用額が生じた。2023年度の研究において、当該の残余額を充当することで培養基礎条件の検討を早期に完了することを目指す。
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