2022 Fiscal Year Research-status Report
ドライ熟成肉の香りや味わいの生成に関わるカビ類の特定とその作用機構の解明
Project/Area Number |
21K05901
|
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
三上 奈々 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (80700278)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊留 孝仁 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90422245)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ドライ熟成肉 / 香気成分 / オレイン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドライ熟成肉(Dry-aged beef:DAB)は、低温熟成庫内で肉表面に風を当て数週間貯蔵した牛肉である。クラストと呼ばれる乾燥した肉の表面には真菌類が生育し、それらが分泌する酵素が独特の熟成香や味わいをもたらすと考えられているが、詳細は不明である。 研究代表者らは、DABに優占的に分布している接合菌(Mucor flavus、Helicostylum pulchrum)を単離・調製し、単一菌株接種によるドライ熟成肉の肉質特性への影響を調べてきた。当初は接合菌類が脂質成分を代謝して香気成分を生成していると仮説を立てたが、2022年度までの研究においてこれらの接合菌は脂質よりも遊離アミノ酸やペプチドといったタンパク質源をより資化しやすく、プロテアーゼを産生することも確認された。このことより、接合菌接種による香気成分の増強はタンパク質成分に由来する可能性も示唆された。 一方で、DABの口どけや味わいに関わる脂肪酸とされるオレイン酸の割合について、クラストに近い肉の表層とクラストから離れた内部で比較を行った。その結果、接合菌の影響が強いと考えられる表層において内部よりもオレイン酸の割合が高かった。これらのことより、接合菌が脂肪酸に不飽和化などの作用をすることで脂肪酸組成を変化させる可能性が示唆された。接合菌自体は肉内部には侵入しないことを形態学的に確認したが、接合菌が菌体外に産生する何らかの化合物がこれらの脂肪酸の代謝に影響する可能性を示唆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初はトリグリセリド添加培地における香気成分の生成機構を予定していたが、研究を進める中で脂質よりもタンパク質を資化しやすいことが明らかになったため、肉エキス、ペプトン、ゼラチンなどタンパク質成分を主要に含む培地に変更して単離接合菌の至適条件や特性などを明らかにしてきた。当初の予定だった香気成分生成経路に関連する遺伝子やタンパク質発現の評価については、現在検討中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
接合菌をDABまたは培地に接種した際、今年度までの研究でタンパク質成分が基質として優先的に利用される可能性が示唆されたため、香りについてはタンパク質を利用して1‐ヘキサノールなどの香気成分が産生されるかを調べていく。一方で、DABの味わいに関連するオレイン酸の生成機構に関しては、ステアリン酸やオレイン酸の割合の変化と不飽和化酵素の関連などを遺伝子的、生化学的視点から検討する。
|
Causes of Carryover |
今年度実施予定だった実験がやや遅れておりそれに充てる費用が未使用となった。次年度に実施予定であるため、次年度の当初予算分と合わせて使用する計画をしている。
|
Research Products
(2 results)