2022 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム情報による黒毛和種の産肉性に関する非相加的遺伝様式の解明と育種改良への応用
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21K05905
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣岡 博之 京都大学, 農学研究科, 教授 (60192720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 元秀 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 主任研究員 (10585970)
井上 慶一 宮崎大学, 農学部, 教授 (30753917)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 黒毛和種 / 染色体 / 脂肪交雑 / ゲノム育種価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では肥育牛とその父と母が完備したゲノム(SNP:一塩基多型マーカー)情報を用いて、父と母からの遺伝伝達様式を明らかにする理論を構築し、全ゲノム関連解析を実施して、新しい遺伝様式を示す遺伝子を特定することを目的とした。昨年度と同様に鳥取県畜産試験場および家畜改良センターから黒毛和種種雄牛240頭、母牛1,563頭、肥育牛2,006頭について34,481個のSNPデータを収集した。 本年度は、特に染色体レベルでの分析を実施した。黒毛和種や褐毛和種の遺伝的特徴として脂肪交雑と皮下脂肪の間に弱い負の遺伝相関があり、このことは脂肪交雑による選抜が皮下脂肪の増加をもたらさないという意味で望ましい関係であることが知られている。そこでゲノム情報を用いることでこれらの形質間の遺伝的関係性を染色体レベルで検討した。 鳥取県および家畜改良センターで肥育された黒毛和種肥育牛1,908頭の脂肪交雑(BMSナンバー)と皮下脂肪厚の枝肉成績とSNP情報から染色体別にゲノム関係行列を構築し、ベイズ推定を実施して、染色体ごとのゲノム遺伝分散とゲノム育種価を推定した。 ゲノム遺伝分散はBMSナンバーでは第2、7、12染色体で大きく、皮下脂肪厚では第3染色体で大きかったが、極端に大きな値を示す染色体は存在せず、これらの形質は主にポリジーンによって支配されていることが示唆された。これら2形質のゲノム育種価間の相関係数はゲノム全体では-0.118であったが、第21と28染色体で高い正の相関があり(0.579と0.512)、第6と9染色体で高い負の相関が認められた(-0.487と-0.470)。このことから、これらの染色体上の遺伝子はこれら2形質に対して強い多面作用のあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね、予定通りに研究は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
黒毛和種の枝肉形質について、父と母からの遺伝子の伝達様式がどうなっているかを染色体レベルで明らかにしたい。また、特に脂肪交雑についてはまだまだ未知のことも多いので、これまでの先行研究から個々の染色体上の遺伝子についてその機能等を調べ、本研究から得られた結果との整合性を図りたい。また、ブタなどの他の畜種に関する筋肉内脂肪の皮下脂肪の関連性を調べるのに適したデータがあるので、畜種間の比較も行いたい。
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Causes of Carryover |
コロナ下のため、本来、海外の国際学会での発表がZOOMでの発表となったため、使用計画通りにならなかった。今年度は、5類になればワクチン接種の要件がなくなるので、国際学会参加を計画している。
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