2021 Fiscal Year Research-status Report
分子時計によるアクアポリン1発現調節機構の解明と腎障害への関与についての研究
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21K05922
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
園田 紘子 宮崎大学, 農学部, 准教授 (60608272)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アクアポリン1 / 分子時計 / 腎障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
水チャネルアクアポリン1(AQP1)は腎において近位尿細管およびヘンレの下行脚に発現しており尿濃縮に関与している。本研究では「腎において分子時計によってAQP1は発現調節を受けており、腎障害では分子時計の破綻によりAQP1の発現量減少が引き起こされる」という作業仮説を明らかにすることを目的とする。 はじめに腎におけるAQP1発現に概日リズムが存在するかどうかを確かめる目的で、R3年度はラットを用いて尿および腎を用いて実験を行った。尿量について検討したところ、ラットにおける休息期である明期(12時間)よりも、活動期である暗期(12時間)において2.6倍増加していた。次に、4時間ごとに腎を摘出し、皮質、髄質外帯、髄質内帯を分離し、それぞれの部位におけるAQP1 mRNA発現量をリアルタイムPCRで定量した。明期開始を Zeitgeber time (ZT) 0して、ZT4の発現量を基準として他の時点との比をとった。皮質ではZT4からZT12にかけて増加していき、ZT16で最も減少し、その後ZT24にかけて増加していった。髄質外帯ではZT12に発現量のピークがあるものの、他の時間帯はZT4との差はなかった。一方、髄質内帯では明期ではZT4からの変化はなかったが、暗期のZT16からZT24にかけて増加していった。4時間ずつ蓄尿した尿量と各時点でのAQP1 mRNA発現量の相関を調べた所、皮質では有意な負の相関がみられ、髄質内帯では有意な正の相関が認められた。このことから皮質部と髄質部のAQP1 mRNA発現の概日リズムは逆方向に制御されることが考えられた。また、尿濃縮には腎の皮質部と髄質部の浸透圧勾配が必須であり、それぞれの部位でのAQP1発現量が逆向きに変化することで浸透圧勾配を調整している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R3年度は予定通りラットを用いて腎におけるAQP1発現の概日リズムについての検討を行った。その結果腎の部位によって異なるAQP1発現の概日リズムが存在し、そのことが尿量の概日リズムに寄与している可能性を見出した。今後、AQP1タンパク質や時計遺伝子群の腎における発現リズムを検討するが、そのためのサンプリング等は終了しており、解析にはすでに着手しているため、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在着手中のin vivo実験によるラット腎を用いたAQP1の概日リズムの検討が終了した後は、in vitro実験のルシフェラーゼアッセイによってAQP1の時計遺伝子による発現制御について明らかにしていく予定である。また、腎障害におけるAQP1発現減少と分子時計の破綻との関連についても腎障害モデルラットを用いて検討していく予定である。 研究を遂行する上での課題は、AQP1の時計遺伝子による発現調節が認められなかった場合である。AQP1の水輸送のドライビングフォースは細胞内外の浸透圧勾配であるため、もしAQP1の概日リズムが時計遺伝子によるものでない可能性が考えられた場合には、浸透圧物質の濃度に関与する溶質輸送体の概日リズムにも着目することも対応策として考えている。
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