2022 Fiscal Year Research-status Report
宿主細胞分子SLAM利用能を基にした鯨類モルビリウイルス感染拡大機序の解明
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21K05929
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
關 文緒 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (20443111)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 鯨類モルビリウイルス / H タンパク質 / SLAMF1 |
Outline of Annual Research Achievements |
流行を拡大しているdolphin morbillivirus (DMV)の特徴をSLAM利用能力から明らかにするために、他の鯨類モルビリウイルスとSLAM利用能力について比較を行った。dolphin morbillivirus (DMV)とporpoise morbillivirus(PMV)のそれぞれのHemagglutinin (H)タンパク質のSLAM結合部位を含むHタンパク質のC末端側のアミノ酸置換が利用能力の変化を生じており、PMV株ではモルビリウイルスで広く保持されている残基のアミノ酸置換が融合能力を変化させていた。 本年度は、昨年度の研究を踏まえDMVの融合能力の上昇について解析を進めた。Dual split法を用いた細胞融合測定により、DMVのFusion (F)タンパク質はSLAM非依存性の細胞融合を生じることが明らかとなった。このことから、DMV Fタンパク質は強い細胞融合能力を持っており、DMV株の病原性への関与が推測される。 また、本年度は国内海岸線に漂着した鯨類サンプルに対し鯨類モルビリウイルス感染の有無のスクリーニングを実施した。当初nested-RT-PCR法による検出を目指したが、real-time RT-PCR法による、より広い鯨類モルビリウイルス種を検出可能な方法が報告されたため、検出方法を変更して解析中である。また、Vero細胞にHAタグ融合イルカSLAMを発現させた細胞を用いて、ウイルス分離を試みた。今年度解析した検体ではウイルスは分離できず、海外流行株のような陽性検体は確認されていないが、日本近海における鯨類モルビリウイルス感染の広がりについて新たな知見が得られるように解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
他の鯨類モルビリ種と異なりDMVが感染を拡大している理由につながるHタンパク質の変化及びFタンパク質の変化が明らかとなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
北大西洋に鯨類モルビリウイルスの感染が拡大しているかについては日本国内海岸の漂着鯨類の解析を進めることで、鯨類モルビリウイルス感染の有無について知見を得る。また、DMVの病原性及び感染性の解析は、新たに鯨類モルビリウイルスの1種であるpilot whaleモルビリウイルスの遺伝子配列が報告されたため、これとも比較を行い、DMVがより特徴的なH及びFタンパク質を持つことを明らかにする。
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Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが、令和5年4月1日以降となったため。 当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和4年度分についてはほぼ使用済みである。
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