2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of new technology to improve conception rate after artificial insemination using frozen dog semen
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21K05945
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
堀 達也 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (80277665)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 犬 / 凍結精液 / 人工授精 / 妊娠 / 精子運動性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで本研究室で行っている犬凍結精液では、融解時に融解液は使用していなかったが、この凍結精液を使用した人工授精によって産子を得ることが可能であることが明らかとなっている。しかし、融解時に様々な精子活性物質を含む融解液を使用することで融解後の精液性状を向上させることができ、さらに受胎率を向上させることができると考えられる。そこで、本研究室独自の融解液を開発することを計画し、実験を行った。 実験としては、これまでの犬精子の運動性を活性化させる物質に関する研究から、エチレングリコールビス-N,,N,,N,,N,-四酢酸(EGTA)とN-アセチル-L-システイン(NAC)を選択し、これらの物質を添加した融解液を作成し、凍結融解した犬精液に添加した後の精液性状の変化について観察した。なお融解液の基礎液としては、当研究室で使用している犬精液希釈液である卵黄トリス・フルクトース・クエン酸から卵黄成分を抜いた希釈液(T-FC)を用いた。実験1としてT-FC中に0、5、10、15、25 mmolのEGTA、実験2としてT-FC中に0、1、2.5、5、10 mmolのNACを添加した融解液を作成して、融解後の犬凍結精液に添加し精液性状に及ぼす影響を検討した。 その結果、どちらの物質も5 mmolの濃度で添加した融解液を使用した時に、融解後の精液性状をコントロール群よりも良好に長期間維持できることが明らかになった。さらにこれらの結果から、5 mmolのEGTAおよび5 mmolのNACを添加した融解液を作成し、融解後の犬凍結精液に添加して精液性状に及ぼす影響を検討したところ、融解液を使用しないコントロール群に比較して、良好な精液性状を長時間維持できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当研究目的の1つである、凍結融解後の精液性状を向上させるための、独自の融解液の開発について、2つの精子活性物質をベースとした独自の融解液を作成し、犬凍結精液の融解後の性状を向上させることができた。この融解後の凍結精液を用いて、少数ではあるが人工授精を行ったところ、以前に報告したものよりも少ない精子数で受胎できたため、この融解液はかなり凍結融解後の精子の性状を向上させることができていると評価している。 研究当初には、精子の運動性を客観的に評価するための精子運動解析装置(CASA)がなかったため、精液を精子活力検査板にのせ、光学顕微鏡でその動きを肉眼で評価する主観的な方法にて精子の運動性を評価していた。しかし、精子の運動性の評価は、客観的な評価に加えて精子の運動性の詳細な要素(例えば、精子の直線速度、曲線速度、頭部振幅、頭部振動数など)の分析が必要であると考える。当研究室にも昨年度の終わりに、ようやくCASAの1つであるSMAS(株式会社ディテクト製)を購入することができた。そのため、今年度行った実験については、融解液の使用によって精子の運動性を向上させることは明らかにすることができたが、その運動性の向上については改めて評価をやり直さなくてはいけないと考えている。したがって、当初の研究計画よりは、少し遅れてしまっていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究では、精子の運動性の評価が重要である。これまで当研究室で行ってきた研究では、精液を精子活力検査板にのせ、光学顕微鏡でその動きを肉眼で評価することで、精子の運動性を客観的に評価していた。しかし精子の運動性は客観的に評価する必要性があると考え、最近、精子運動解析装置(CASA)の1つであるSMAS(株式会社ディテクト製)を購入した。これにより、精子の運動性を客観的に評価できるだけでなく、精子の直線速度、曲線速度、頭部振幅、頭部振動数など精子のより詳細な評価を行うことが可能と考えられる。そのため、今後はこのSMASを使用した客観的評価をベースとして、今回の実験には使用していない異なる精子活性物質をベースとした融解液の検討を行うことを計画している。また、作成された融解液を実際の凍結精液の人工授精に使用し、受胎成績を従来の方法による成績と比較をすることで、融解液の有用性を評価することを計画している。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、初年度に備品として硬性鏡であるHOPKINS II テレスコープ30 3.mm カールストルツ・ エンドスコピー・ジャパン株式会社)を購入する予定であったが、精子運動解析装置の購入に変更し、その装置で使用する消耗備品(マクラチャンバー)の購入にその費用を使用することに変更した。そのため、当初の計画よりは使用する金額が少なくなってしまったが、硬性鏡の購入を再検討しつつ、残額は次年度に使用するように計画している。
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