2022 Fiscal Year Research-status Report
ビローム解析による野生イノシシの腸内ウイルスコミュニティの解明と豚との比較
Project/Area Number |
21K05947
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
長井 誠 麻布大学, 獣医学部, 教授 (10540669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大井 徹 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (10201964)
竹前 等 東京農工大学, 農学部, 特任講師 (40415550)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イノシシ / 豚 / 糞便ウイルス / 新規ウイルス / ウイルス分離 / メタゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イノシシと豚における腸内ウイルスコミュニティの比較解析を行い、新規ウイルスの発見や家畜及びヒトにおけるウイルスの種間伝播を予測することを目的としている。2022年度はイノシシの糞便67検体及び豚の糞便141検体を採材してウイルス分離及び次世代シークエンスを実施し、前年度以前に検出されたウイルスを含めて解析を実施した。 2018年にイノシシからオルソレオウイルスを分離し、このウイルス株が我が国のヒト及び動物園のライオンから分離されたオルソレオウイルスと遺伝子再集合を起こしていることを報告した(Zhang et al. 2021)。今回、豚から5株のオルソレオウイルスを分離し、その全ゲノムを前述のイノシシ、ヒト及びライオン、さらに我が国の下水から検出されたオルソレオウイルスのそれと比較したところ、豚からのオルソレオウイルスは世界各地の豚から分離されたオルソレオウイルスと同様な遺伝子配列を基本として保有するが、S1及びL1遺伝子にイノシシ及び下水由来オルソレオウイルスとの遺伝子再集合、さらにはM1遺伝子にイノシシと豚、S1遺伝子に豚、ヒト及びコウモリ由来オルソレオウイルスとの遺伝子組換えが認められることを見出した(Fukase et al. 2022)。オルソレオウイルスは宿主域が広く、家畜では経済損失を伴う疾病の発生は少ないものの、ヒトで呼吸器、消化管及び中枢神経感染症が報告されていることから、今後もイノシシ及び豚における本ウイルスの動向を監視する必要があると思われる。 その他、前年度解析を実施した、イノシシから初めて分離された豚ウイルスアデノウイルス5型について論文発表を行った(Oba et al. 2022)。さらに昨年度報告した世界で初めて分離された牛パレコウイルスについて、我が国における浸潤状況を調査し、イノシシや豚での浸潤は確認されなかったが、我が国の牛に浸潤していることを報告した(Oba et al. 2023)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イノシシ及び豚の糞便材料の採材および解析は順調で、4種類のウイルスを分離し、次世代シークエンサーを用いたメタゲノム解析においても多くのウイルスを検出することができた。その解析において新規知見が得られており、おおむね順調に進展していると考えている。前述のとおり豚からのオルソレオウイルス、イノシシからの豚アデノウイルス5型、牛パレコウイルスの浸潤状況について論文を発表し、さらにいくつか論文を作成しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
イノシシは引き続き同じ地域で採材を行い、経時的なウイルスの変化を調査する予定である。豚については同じ地域を経時的に調査するとともに、採取地域を拡大してこれまでの地域との比較を行う予定である。分離されたウイルスについては、同じウイルス種であっても分離されやすい遺伝子型や分離できない遺伝子型があるエンテロウイルスGについて、イノシシ由来及び豚由来の例数を重ねてその傾向を調査する。本研究の「問い」であるイノシシと豚間のウイルス伝播、さらには他の家畜やヒトとの種間伝播に関する知見が集積されてきているので、さらに新知見を求めて研究を継続する。
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Causes of Carryover |
試薬の購入を次年度に先延ばししたため。
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