2023 Fiscal Year Research-status Report
ビローム解析による野生イノシシの腸内ウイルスコミュニティの解明と豚との比較
Project/Area Number |
21K05947
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
長井 誠 麻布大学, 獣医学部, 教授 (10540669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大井 徹 石川県立大学, 生物資源環境学部, 特任教授 (10201964)
竹前 等 東京農工大学, 農学部, 准教授 (40415550)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | イノシシ / 豚 / 糞便ウイルス / ウイルス分離 / 次世代シークエンス / A群ロタウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イノシシと豚における腸内ウイルスコミュニティの比較解析を行い、新規ウイルスの発見や家畜及びヒトにおけるウイルスの種間伝播を予測することを目的としている。2023年度はイノシシの糞便71検体及び豚の糞便40検体を採材した。本年度はA群ロタウイルスに焦点を当てて研究を実施した。 A群ロタウイルスはヒトを含む各種動物の主に幼弱個体に感染し、下痢症を引き起こす。ヒトでは先進国でも被害が認められ、我が国においてもワクチンが普及されている。これまでの本研究で、イノシシ及び豚からA群ロタウイルスがそれぞれ10.8%(23/212頭)及び20.7%(87/421頭)検出されている。今回、豚の糞便8検体から培養細胞であるMA104細胞を用いて8株のA群ロタウイルスが分離された。またイノシシ1検体及び豚4検体から、細胞培養によるウイルス分離は成功しなかったが、糞便を材料として実施した次世代シークエンスによりほぼ完全長のA群ロタウイルス遺伝子が検出され、培養細胞から得られた8株についても次世代シークエンスで全ゲノムを決定し、遺伝子解析を行ったところ、多様な遺伝子型を示すあることが判明した。特にNSP5遺伝子は我々が以前世界で初めて豚から発見したH2ロングゲノムパターン遺伝子型を保有する株が遺伝子再集合を繰り返しながら我が国の豚の中で浸潤を拡大していることが判明した(Shizawa et al. 2024)。このゲノムパターンのウイルスは、最初ヒトから1980年代に見つかったウイルスで、ヒトから豚に種間伝播したと考えられているが、豚の中で分布を広げていることから、ヒトに戻ってくる可能性があることから引き続き調査を続けなければならないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
野外材料(イノシシ及び豚の糞便)の採材は順調で、研究機関を通じて予定されていた採材数をクリアした。ウイルス分離や次世代シークエンスによる解析も順調であったが、研究代表者が本人の病気と家庭の事情で2023年度の後半から実験と解析を十分に実施することができなくなり、特に2023年度に採材した検査材料の検査と解析が予定どおり実施できなかったので、研究機関の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2023年度に採材し、検査や解析を実施することのできなかった検体を中心に、さらなる実験を行う。具体的にはウイルス分離と遺伝子解析を実施し、ヒトをはじめとする動物とのウイルスの種間伝播を探索することで新しい知見の集積を目指す。
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Causes of Carryover |
研究代表者が本人の病気と家庭の事情で2023年度の後半から実験と解析を十分に実施することができなくなり、特に2023年度に採材した検査材料の検査と解析が予定どおり実施できなかったため。
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