2021 Fiscal Year Research-status Report
鶏の体内における鶏貧血ウイルスの持続感染の検証とその感染機構に関する解析
Project/Area Number |
21K05949
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
山本 佑 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 上級研究員 (30462542)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 鶏貧血ウイルス / 鶏 / 持続感染 / ウイルス検出法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、鶏貧血ウイルス(CAV)の鶏の体内における持続感染の可能性を検証し、その感染機構の解明に取り組むことである。 本年度、高感度in situ ハイブリダイゼーション法(ISH)としてRNAscopeを用いたCAV遺伝子検出法を開発した。まず鶏の正常組織に発現するPPID遺伝子を検出するコントロールプローブを用いてISHの実験環境の整備を行った。次に本研究の感染実験で使用を予定するCAV HS1/17株の遺伝子配列データからVP1遺伝子を検出するプローブを作製した。陽性対照としてCAV感染鶏の病理組織標本を用いてISHを試行した結果、CAV遺伝子の検出シグナルが確認された。CAVに感染していない鶏のサンプルでは検出シグナルは認めなかった。また病理組織切片上でCAV抗原を検出する免疫染色を行い比較したところ、ISH検出シグナルとCAV抗原の分布は類似していた。以上から本研究で開発されたISHは、非特異反応を生じることなくCAV HS1/17株の組織学的な遺伝子検出が可能と考えられた。 また、CAV HS1/17株の遺伝子を高感度かつ定量的に検出可能なリアルタイムPCR系を開発した。ISHと同じく検出対象をVP1遺伝子とし、これを検出可能なFAM標識MGBプローブおよびPCRプライマーを設計した。プローブおよびプライマーの配列は鶏ゲノム参照配列と相同性がないことを確認した。また遺伝子合成によりVP1遺伝子のコピー数定量用の標準物質を作製した。過去に作製したCAV感染鶏の臓器乳剤およびCAV感染培養細胞から抽出したDNAを用いて試行したところ、各サンプルのVP1遺伝子を定量的に測定することが可能であった。以上より、開発したリアルタイムPCR系はCAV HS1/17株の遺伝子定量が可能と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、3年の研究予定期間において、初年度は鶏貧血ウイルス(CAV)の高感度検出法の開発を目標とし、次年度より鶏のウイルス感染実験の実施と解析を予定している。本年度は、CAV遺伝子を検出する高感度in situ ハイブリダイゼーション法(ISH)およびリアルタイムPCR系の確立に取り組んだ。 ISHに関して、本研究で使用予定であるCAV HS1/17株のVP1遺伝子を病理組織切片上で検出可能な実験系を確立した。このISHは、CAV遺伝子の検出シグナルの分布が免疫染色で検出されるCAV抗原分布と概ね一致していたこと、またCAV非感染鶏のサンプルではCAV検出シグナルは非検出であったことから、本研究で有用な解析法の1つとなると考えらえる。 リアルタイムPCR系について、今回新たにデザインしたMGBプローブを用いることで、ウイルスのVP1遺伝子を定量的に検出することが可能となり、検出限界は10コピー以下であった。従って、新たに開発したアルタイムPCR系によるCAV遺伝子定量は有用であると考えられる。 以上より、研究の進捗は概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、鶏の体内における鶏貧血ウイルス(CAV)の持続感染の可能性を検証する点である。初年度の成績でCAVの新たな高感度検出法の開発が成されたことから、今後は鶏を用いた感染実験を実施して解析を進める予定である。 まず所属機関内の動物実験施設において長期間の感染実験を実施する環境整備を行う。次に海外業者からSPF鶏卵を購入し、孵化させた雛に対してCAV HS1/17株を接種する感染実験を行う。感染実験の実施期間は孵化から性成熟に達する6カ月程度を予定している。経時的に臨床検査、解剖検査を行い、個々の鶏から複数の臓器・血液などの解析用サンプルを採材する。今後2年間で複数回の感染実験を予定しており、実験条件の変更や追加解析なども必要に応じて検討する。
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Causes of Carryover |
消耗品等が割引により見積額よりも安価に購入できたため少額の繰り越しが発生した。繰り越し分は、次年度の消耗品費に使用する予定である。
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