2022 Fiscal Year Research-status Report
Epidemiological clarifications and evaluation of the pathogenesis about novel zoonotic Campylobacter distributed among wild lives
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21K05962
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
壁谷 英則 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10318389)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Campylobacter / 野生動物 / 鹿 / 猪 / 病原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、2022年10月から2023年3月までを対象とし、15道府県の鹿170頭、5県の猪41頭の直腸便を供試した。各糞便1gを9mlのPreston培地に接種し、微好気条件下、37℃および42℃で48時間増菌培養後、mCCDA寒天培地およびスキロー血液寒天培地で微好気条件下、37℃および42℃で48時間分離培養した。純培養したコロニーからDNAを抽出し、PCR法で菌種を同定した。さらにPCR法によりChの細胞膨化致死毒(CDT)遺伝子chcdtⅠ、chcdtⅡの保有状況を検討した。鹿、猪由来Ch分離株の病原性解析のための予備的な検討として、Ch標準株を用いて、ヒト腸管上皮細胞株(caco-2細胞)への感染実験を行い、経上皮電気抵抗(ter)値を計測した。 鹿の7頭(4.1%)、猪の20頭(48.8%)からそれぞれ27株、42株のCampylobacter属菌が分離された。分離株は全てChであった。鹿由来の22株(81.5%)、猪由来の17株(40.5%)はchcdtⅠ/Ⅱの両方を保有し、鹿由来2株(7.4%)、猪由来の9株(45%)はchcdtⅡのみを保有していた。令和4年度新たに、chcdtIBのみ陰性の株が鹿由来2株、猪由来10株、chcdtIA, IBのみ陰性を示す株が鹿、猪ともに1株、さらにchcdtIIA,IIB,IIC陰性株、chcdtIIB陰性株、chcdtIIA,chcdtIIC陰性株、chcdtIB, IIA, IIB, IIC陰性株、chcdtIB, IIB陰性株がそれぞれ1株づつ認められた。Ch標準株をcaco-2細胞に感染させたところ、MOI10で感染させ、48時間後にter値が65.1%まで減少したことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、あらたに全国の研究協力者から収集した鹿や猪の糞便を使ってCampylobacterの分離培養を行うと同時に、これまでに分離したC. hyointestinalis(Ch)分離株について毒素遺伝子(細胞膨化致死毒(CDT)遺伝子chcdtⅠ、chcdtⅡ)の解析、並びにヒト腸管上皮細胞株(caco-2細胞)への感染実験を行った。検体の収集は当初の見込み通り収集が可能であった。一方、分離株の病原性評価については、CDT遺伝子の解析において、従来認められなかった新たな保有パターンを示す株が複数認められた。以上から、本研究課題の研究目的に対して、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、引き続き、検体収集、Campylobacterの分離培養、生化学性状解析を継続して実施する。研究協力団体の協力を得て、広く地域的にこれまでに検討できなかった地域における検体を収集することに注力する。特に、全ゲノム解析による網羅的な病原関連遺伝子の探索を実施する株を増やす予定である。全ゲノム解析の成績を用いて、網羅的な病源関連遺伝子の探索に加え、core genome MLSTによる系統解析を実施する計画である。このため、令和4年度までに確立した全ゲノム解析の手法を広範囲に応用し、対象とする分離株の検体数を大幅に増やす計画である。 これらに加え、全ゲノム解析による網羅的な病原関連遺伝子の保有パターンを解析した株を用いて、ヒト腸管上皮細胞に対する病原性評価を本格的に実施する。令和4年度までに構築した感染実験系を実際に分離株に応用し、鹿、猪由来Ch分離株を用いて同様の検討を行い、ter低下をもたらすCh分離株のスクリーニングを行う。特に細胞障害性が高く、あるいは低く認められた株について、タイトジャンクション構成タンパク質に対する障害能を細胞障害試験、ならびにウェスタンブロット法などにより評価するとともに、責任遺伝子の推定を行う。以上の研究成果から、わが国の野生鹿や野生猪が保菌するChの人へのリスクを評価する。
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Causes of Carryover |
令和4年度計画していた研究のうち、鹿、猪由来分離株の全ゲノム解析の実施ができなかった。このため、全ゲノム解析、ならびにその後のcore genome MLST解析に係る研究の実施が予定より遅れたため、当該研究に係る経費の支出が令和4年度内に行うことができなかった。分離株の収集は十分できていたものの、本学で所有する全ゲノム解析に使用する機器(Miseq)が故障し、機器の整備等メーカー側と調整を行ってきたが、メーカー側の製品(消耗品)の問題も発覚し、計画通り当該解析を進めることができなかった。令和5年度は、当該問題を解決し、全ゲノム解析を大幅に進めるため、当該製品を当初計画より多く購入する必要があり、予算を使用させていただく予定である。
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[Journal Article] Prevalence and whole-genome sequence analysis of Campylobacter spp. strains isolated from wild deer and boar in Japan.2022
Author(s)
Morita S, Sato S, Maruyama S, Miyagawa A, Nakamura K, Nakamura M, Asakura H, Sugiyama H, Takai S, Maeda K, Kabeya H.
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Journal Title
Comp Immunol Microbiol Infect Dis .
Volume: 82
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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