2021 Fiscal Year Research-status Report
Molecular and cell biological studies on the regulation of UCP1 gene expression aiming to prevent obesity in dogs
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21K05963
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
村上 賢 麻布大学, 獣医学部, 教授 (80271360)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イヌ / UCP1 / 脂肪細胞 / 肥満 / 遺伝子発現制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペット犬の健康を維持する上で最大の関心事である肥満は、様々な疾病の誘発因子であり、その制御は重要な獣医学的課題である。ヒトの肥満解消の切り札として、褐色・ベージュ脂肪細胞の活性化が注目され、脱共役タンパク質1(UCP1)がそのカギを握っている。我々は、イヌのUCP1発現パターンは、実験動物やヒトとは異なり、ユニークであることを見つけた。これは、イヌのUCP1を介したエネルギー代謝調節は独特である可能性を示唆する。本研究では、イヌ個体及び細胞培養系の解析から、UCP1発現制御と機能を明らかにし、イヌ肥満予防・解消法の提唱に向けた基礎知見を提供する。本研究課題の学術的「問い」は、1.イヌのUCP1遺伝子発現パターンにはどのような特徴があるのか? 2.脂肪組織におけるイヌUCP1遺伝子発現はどのように制御されているのか?であり、この回答を得るため、6つの課題を設定し研究に取り組んでいる。 R3年度は、脂肪組織におけるイヌUCP1発現に影響を及ぼす要因(問い2)を検討するために、課題3「イヌ脂肪組織におけるUCP1関連遺伝子の発現」を調べた。避妊・去勢手術のために動物病院に来院した129頭のイヌより子宮周囲脂肪ならびに皮下脂肪を採取し、UCP1を含めた脂肪細胞関連遺伝子やシグナル伝達関連遺伝子の発現レベルをRT-qPCR法にて調べた(合計23遺伝子)。UCP1発現レベルに影響を及ぼす要因を、カルテ情報も含めて重回帰分析により推定した。褐色脂肪細胞分化やBMPシグナリングに関連した遺伝子発現は年齢とともに減少した。また、ボディコンディションスコア(BCS)や腫瘍(病態)に関連した遺伝子の脂肪細胞における発現を示した。適切なイヌ由来脂肪細胞株として、課題4「イヌ褐色・ベージュ脂肪前駆細胞株の樹立」を目指しており、正常なイヌ脂肪(幹)組織から脂肪前駆細胞株を培養することに着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イヌ脂肪組織におけるUCP1関連遺伝子の発現について、ほぼ目的の十分な数の検体から解析ができ、結果を取りまとめ、国際科学雑誌に投稿することができた(査読中)。イヌの褐色・ベージュ脂肪前駆細胞株の樹立に向けて、イヌの脂肪(幹)細胞からの培養に着手できた。
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Strategy for Future Research Activity |
イヌ UCP1 遺伝子の組織分布とバリアント比及びそれらの機能(問い 1: 課題 1, 2)を明らかにするために、・課題1「イヌUCP1の組織分布とバリアント解析」:市販の複数の健常イヌ個体の各組織(脳、心臓、肝臓、腎臓、骨格筋、脂肪など)由来のRNAを購入し、RT-qPCR法によりUCP1遺伝子発現レベルを調べる。複数の組織からUCP1 mRNAの全長をカバーするプライマーを用いてPCRを行い、電気泳動によりバリアントを確認する。プラスミドにクローニング後、塩基配列を決定し、バリアントの特性を決定する。また、RACE法を用いて各種バリアントの検出を検討する。・課題2「イヌUCP1バリアントの機能」:課題1で明らかになるUCP1バリアントを発現ベクターに組み込んだプラスミドを構築し、COS7細胞に遺伝子導入して、りん光を利用したキットを用いてミトコンドリアにおける酸素消費量を測定する。
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Research Products
(5 results)