2021 Fiscal Year Research-status Report
クロムによるインシュリン抵抗性抑制とエリスロポエチンの関係
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21K05975
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
西村 和彦 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (30285308)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 3価クロム / エリスロポエチン産生 / インシュリン抵抗性 / PPARγ |
Outline of Annual Research Achievements |
3価クロムはEPO産生を介してインシュリン抵抗性を減弱させるかを調べるためにエリスロポエチン産生細胞であるHepG2細胞を用いてパルミチン酸によるインシュリン抵抗性誘導に対するクロムの影響を解析した。3価クロムの添加はパルミチン酸によるインシュリン抵抗性誘導を抑制すること、およびエリスロポエチン産生を促進することを明らかにした。PPARγ阻害剤を用いた実験により3価クロムの作用はPPARγが関与していることを明らかにした。また3価クロムの添加による活性酸素種の産生はほとんどなく、インシュリン抵抗性誘導に対する関与は少ないと考えられた。3価クロムによるエリスロポエチン産生をエリスロポエチンmRNAに対するsimRNAを用いることで抑制すると、インシュリン抵抗性誘導の抑制効果も減少したが、完全に阻害されることはなく、3価クロムがエリスロポエチン産生を介さず、直接的に作用していることが示唆された。これらの結果から3価クロムは直接的におよびエリスロポエチン産生の促進を介してインシュリン抵抗性獲得を阻害していることが示唆された。 得られた結果は第163回日本獣医学会学術集会において「HepG2細胞におけるエリスロポエチン産生の3価クロムによる調節とインシュリン抵抗性獲得の阻害」のタイトルで口頭発表した。 またArchives of Biochemistry and Biophysicsに「Effect of trivalent chromium on erythropoietin production and the prevention of insulin resistance in HepG2 cells.」のタイトルで論文を投稿し、採択された。 これまでの研究から、EPO産生の調節因子である低酸素誘導因子(HIF)とPPARγとの関連において、さらなる解析が必要なことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画に比べて実験計画が順調に進み、1年半程度で達成する内容が1年で達成できており、さらに期待できる結果が得られたので、当初計画以上に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在作用メカニズムの解析に取り組んでおり、特にEPO産生の調節因子である低酸素誘導因子(HIF)とPPARγとの関連について解析している。また、計画している3価クロムによるPPARγ活性化におけるsirtuin-1の関与についての解析も進める。 さらに、可能であれば、クロムはサプリメントとして利用されていることもあり、長期的な影響についても検討が必要と考えており、3価クロムの長期的な影響を調べるために、3価クロムを添加して継代を続けたHepG2細胞を準備し、インシュリン抵抗性やエリスロポエチン産生への影響について解析を進めたい。
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Causes of Carryover |
2020年度に別予算で購入していた試薬等を実験に利用したため、2021年度の物品費の支出が予定よりも少なくなった。またコロナの影響で学会等がWeb開催となり、旅費が発生しなかった。論文添削についての料金は請求の都合上、私費で支払ったため、謝金の支払いは発生しなかった。 2022年度は購入する試薬、資材の高騰もあり、計画よりも物品費の支出が増加すると予想される。また、これまでの結果を再確認するための試薬資材も必要になるため、物品費の支出が増加すると予想される。
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