2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K05983
|
Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
迫 圭輔 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (50786291)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 細胞外pH / フォスファチジルイノシトール |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は、酸性度(以下pH)、温度、酸素に代表される様々な環境因子に対して、適切に応答することで生存が可能となる。これまで細胞外のpH変化に対して、細胞がどのように応答しているかあまりわかっていない。これまでに自身の研究から、細胞膜を構成するイノシトールリン脂質 (以下PI) がpHに応じて内層から外層へ移行することを見つけていた。さらにpH依存的にPIの局在を変化させる分子を網羅的に探索し、候補膜タンパク質(以下X)を同定していた。そこで本研究では、細胞がpH依存的にPIの局在変化を起こす分子メカニズムと、PIの局在変化で起きるpH応答機構の生理的意義の解明を目標として研究に取り組んだ。 まず、どの膜脂質分子種がpH依存性に内外層で局在が変化するか検討を行った。ゼブラフィッシュ初期胚から分取した未分化細胞に対して、内層を構成する各脂質に対する蛍光プローブを細胞外から作用させた結果、特定のリン酸化PIのみがpH依存性の局在変化を起こすことがわかった。脂質の局在変化を誘導する膜タンパク質として、ATPまたはカルシウム依存性の膜タンパク質が知られている。ATP合成阻害剤、カルシウム阻害剤で処理した細胞でもPIの外層移行が起きたことから、PIの外層移行はATP、カルシウムどちらにも依存しない新たな機構で起きていることがわかった。リン酸化PIを脱リン酸化する酵素の過剰発現により細胞内PI量を減少させた細胞では、外層のPI量が顕著に減少したことから、内層から外層へPIが移行していることがわかった。Xを欠損した細胞ではPIの局在変化が起きないことから、XがPIの局在変化に関与する分子であることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね計画通りに研究が進んでいる。細胞膜内層に局在し、様々な細胞機能の調節に関わるPIが、細胞外のpH変化を感知して外層に移行するメカニズムが明らかになりつつある。移行に関わる分子を網羅的に探索した結果同定していたXが、培養細胞やゼブラフィッシュ未分化細胞を用いた実験により、PIの外層移行に関与する可能性が高いことも明らかとなった。Xを欠損したマウスとゼブラフィッシュの作成は既に完了し、個体レベルでPIの外層移行の意義を明らかにする準備ができている。初期検討を行った結果、発生過程で様々な表現型を呈することから、細胞外pH応答機構は生体内で重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きXの機能解析を行うことで、PI外層移行の分子機序を明らかにし(1)、個体におけるpH応答性PI外層移行の生理的意義(2)を解明する。(1)については、XがpHの感知に関与するか、PIに作用して内層から外層に移行させるか、の2点に注力して解析を行う。 (2)については、X欠損マウスおよびゼブラフィッシュの表現型を分子レベルで解析することで、pHの変化に対してどのような応答が生体内で必須となるのか明らかにする。
|