2022 Fiscal Year Research-status Report
Functional analysis of the Trap Clone Accumulated Area (TCAA).
Project/Area Number |
21K05999
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
荒木 正健 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 准教授 (80271609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉信 公美子 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 助教 (20274730)
荒木 喜美 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 教授 (90211705)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遺伝子トラップ / 胚性幹細胞 / Oct4 / ATAC-Seq / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、遺伝子トラップクローン(TC)の解析を行う際に、遺伝子は無いのにTCが集積している領域を発見した。この様な領域をTCAA (Trap Clone Accumulated Area)と呼ぶことにする。 2021年度までに、情報量の少ないY染色体を除いた残りのすべての染色体についてTCAAの探索を行い、1104個のTCAAを同定した。平均すると、1 Mbpあたり0.41個のTCAAが存在することになる。TCAAが一番多かったのは11番染色体(102個)で、その頻度は1 Mbpあたり0.84個であった。 次にTCAAの機能を推定するために、マウスES細胞で得られたRNA-Seq, ATAC-Seq, Oct4-ChIP-SeqのデータをUCSC Genome Browser (mm9)に登録し、領域内のシグナルの最大値を記録した。その際対照群として、遺伝子もTCも無い領域(C1&11)、既知遺伝子を含む領域(G1&11)、ES細胞の多能性維持に関与していると考えられている遺伝子を含む領域(GP)についても併せて解析した。その結果、TCAAは、染色体全体において、有意に発現していること、クロマチンがオープンになっていること、及びES細胞の多能性維持に重要な転写因子であるOct4が、G1&11よりも有意に多く、GPと同程度に結合していることが分かった。 さらにゲノムブラウザで公開されているエピゲノム情報(H3K4me1, H3K4me3, H3K9me3, H3K36me3, H3K27ac)を解析し、エンハンサー活性とリンクしているH3K4me1及びH3K27acについて、TCAAはC1&11だけでなくG1&11よりも有意に高く、GPと同程度のシグナルを示していることが分かった。 これらの事実から、TCAAはES細胞の多能性維持に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、マウスChr.1-19 & Chr.XについてH3K4me1, H3K4me3, H3K9me3の解析を行った。その際対照群として、遺伝子もTCも無い領域(C1&11)、既知遺伝子を含む領域(G1&11)、ES細胞の多能性維持に関与していると考えられている遺伝子を含む領域(GP)についても併せて解析した。その結果、TCAAはG1&11と同等なプロモーター活性を有し、G1&11よりも有意に高く、GPと同等なエンハンサー活性を持つと推定された。 次に、Chr.1とChr.11のTCAAについてH3K4me1, H3K4me3, H3K36me3, H3K27acの解析を行った。その結果、エンハンサー活性とリンクしているH3K4me1とH3K27acについてTCAA1&11はG1&11よりも有意に高く、GPと同程度のシグナルを示した。また、2種類のES細胞株(E14 & Bruce4)について、同じ結果が得られた。 さらに、ES-Bruce4, MEF, Whole Brain (E14.5), Testis, Kidney (8w), LungについてH3K4me1を解析したところ、TCAA1&11がG1&11よりも有意に高く、GPと同等なシグナルを示したのはES-Bruce4だけであった。 最後に、2013年のCellに報告されたES細胞におけるSuper-Enhancer (SE)の位置とTCAAの関係を調べたところ、231個のSEのうち、120個(51.9%)がTCAAとオーバーラップしていた。逆に、1104個のTCAAのうち、117個(10.6%)がSEとオーバーラップしていた。さらに、TCAA1&11の中で、SEとオーバーラップしている22個と、SEと無関係な148個を比べたところ、ES-Bruce4におけるH3K4me1に関して有意差はなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
TCAAとSuper-Enhancer (SE)の関係について、より詳しい解析を行う。具体的には、すべての染色体について、SEとオーバーラップするTCAAと、SEと無関係なTCAAを比較する。また、ES細胞以外の細胞におけるSEとの関係も調べる。 さらに、プレリミナリーな解析で興味深い結果を得ている主成分分析(PCA)を利用して、1104個のTCAAの機能的な分類を試みる。特徴的なTCAAを選んで、ノックアウトマウスを作製し、その表現型を解析する。 得られた新しい知見を論文にまとめて報告する。
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Causes of Carryover |
2023年度は、TCAAのエピゲノム情報を利用した主成分分析をさらに進めて、特徴的なTCAAのノックアウトマウスを作製し、その表現型を解析する予定である。そこで、マウス飼育経費を確保するために、2022年度に使用予定していた予算の一部を最終年度に回すことにした。
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Research Products
(17 results)