2021 Fiscal Year Research-status Report
熱ストレスに応答した選択的スプライシング機構の研究
Project/Area Number |
21K06018
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井上 邦夫 神戸大学, 理学研究科, 教授 (40252415)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松花 沙織 神戸大学, 理学研究科, 助教 (70767251)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 選択的スプライシング / 熱ストレス / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は各種ストレスを含む細胞環境に応答して遺伝子発現制御を行う。真核遺伝子の多くはイントロンで分断されており、機能的なmRNAが生成するにはイントロンを除去するスプライシング反応が必須である。選択的スプライシングの制御は、プロテオーム変化を介し、細胞環境に応じた細胞の振る舞いや恒常性の維持に働く遺伝子発現制御機構として重要と考えられるが、その分子基盤や個体レベルでの役割については多くの未解明な問題が存在する。本研究では、(1) 熱ストレス応答性の選択的スプライシング制御因子として同定したSRSFやhnRNP K などが通常温度でも豊富に存在するRNA結合タンパク質であることから、制御因子の翻訳後制御、とりわけ、リン酸化・脱リン酸化による機能調節が熱ストレス応答制御の中核をなしているとの作業仮説を立て、主にヒト培養細胞においてその検証と詳細な分子基盤の解明を行うとともに、(2) 熱応答性制御を受けるエキソンをゲノム編集により恒常的に挿入あるいは欠損するよう改変した遺伝子を持つゼブラフィッシュ系統を作製し、熱ストレスにより生成する選択的スプライシング産物が動物のストレス応答や恒常性維持にどのような役割を果たすか明らかにすることを目的としている。本年度は、主に、ヒト細胞において、tnrc6a遺伝子における熱ストレス応答性スプライシング制御をモデル系として、リン酸化酵素CLK1の過剰発現やノックダウンの効果、および、特定のセリン残基に変異導入したSRSF10の過剰発現の効果の検討を進めるとともに、熱ストレス応答制御を可視化するレポーター遺伝子の構築に取り組んだ。また、短いイントロンにおける新規スプライシング機構の解明に貢献した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
超低温フリーザーの故障などのトラブルがあり、予定していた解析の一部について着手が遅れている。また、熱ストレス応答性の選択的スプライシング可視化系について、レポーターの検出感度を上げる必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
熱ストレス応答性の選択的スプライシングの各制御タンパク質(SRSF2, SRSF10, SFPQ, hnRNPK)について、リン酸化状態による活性調節の分子基盤解明を進める必要がある。ヒト培養細胞を通常温度、 熱ストレス条件、および、熱ストレスから通常温度に戻した回復条件下で、抗リン酸化抗体などを用いた解析によって、各制御タンパク質がリン酸化-脱リン酸化制御を受けるか検討し、そのリン酸化修飾部位を同定する。1年目に各種の変異導入を行ったSRSF10を含め、リン酸化修飾部位や脱リン酸化酵素結合候補部位に変異導入した各制御タンパク質について、hsp105遺伝子(制御タンパク質SFPQ, hnRNPK)やtnrc6a遺伝子(制御タンパク質SRSF2, SRSF10)を指標とした選択的スプライシング制御活性や、特異的な標的RNA配列への結合活性、細胞内動態、相互作用タンパク質の変化を解析し、制御タンパク質のリン酸化状態の変化がどのように熱ストレス応答性の選択的スプライシング制御に結びついているのか詳しく明らかにする。SRSF10遺伝子における選択的スプライシング自己制御についても、新たなモデルとして導入する。 一方、熱ストレス応答性の選択的スプライシングを可視化する実験系について、検出感度を向上させたGFPレポーター遺伝子を構築し、ヒト培養細胞での確認後に、ゼブラフィッシュにおいて、Tol2トランスポゾンを用いて、トランスジェニック系統の作製に着手する。また、ユタ大学グループとの共同研究により変異体系統の作製を進める。
|
Causes of Carryover |
超低温フリーザー故障に伴い、一部実験の着手に遅れが生じたため。
|
Research Products
(7 results)