2023 Fiscal Year Research-status Report
新規形成セントロメアの減数分裂における競合と定着の分子機構
Project/Area Number |
21K06022
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
石井 浩二郎 高知工科大学, 理工学群, 教授 (40360276)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | セントロメア / 減数分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
セントロメアは進化において頻繁に染色体上の再配置を起こす。しかし、染色体上の異なる位置の新しいセントロメア(ネオセントロメア)が均一な生物集団の中に出現した場合、そのネオセントロメアをもつ生物は従来セントロメア生物とのヘテロな減数分裂を避けられない。進化でセントロメア再配置が検出されるということは、ヘテロな減数分裂で生じる致死的な二動原体染色体においてネオセントロメアが安定性を獲得(セントロメア競合)し、次世代に効率よく継承されることを意味する。しかし、この二動原体染色体におけるセントロメア競合の実体や詳細は全く理解されていない。本研究では、分裂酵母を用いてセントロメア競合を人工的に再構築し、その実体と分子メカニズムの解明を行う。これにより、セントロメアが進化の中で柔軟に再配置する意義の理解を深める。 この目的の達成に向けて、本研究では「セントロメア競合アッセイの確立」「セントロメア定着の促進因子の同定」「セントロメア定着の分子メカニズムの解明」という3つの課題に取り組む計画を立てた。当該年度はこのうち主に、「セントロメア定着の分子メカニズムの解明」について重点的に研究を進めた。その結果、特定のセントロメアに固有な競合欠損の原因として、セントロメアとセントロメアに隣接するテロメアヘテロクロマチンの間の距離が重要であることが判明した。分裂酵母のテロメアヘテロクロマチン形成にはRNA干渉機構に関して独自の介入経路があり、それらのセントロメア競合への関与についても詳細な解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画どおり、本研究ではマーカー遺伝子発現と蛍光タンパク質局在化を組み合わせたセントロメア競合アッセイを分裂酵母に完成させ、蛍光顕微鏡の画像取得自動化を介したアッセイの定量化にも成功してきた。しかし、様々なヘテロクロマチン関連遺伝子変異とこのアプローチに組み合わせていくと、過去に取得したデータの再現性や同様の細胞効果を示す異なる遺伝子変異の間で異なる結果が得られて解釈が複雑になるなど、想定していなかった問題に直面し、本来3年間で完了する予定であった研究を期間内に終えることができなかった。これらの理由により、研究は計画よりもやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
延長した次年度も、当該年度の特定のネオセントロメアが示す競合欠損の原因解明の研究を継続する。当初計画では「セントロメア定着の分子メカニズムの解明」に該当するが、一部「セントロメア定着の促進因子の同定」にも立ち戻り、より広範囲に解析を進めることで、現在直面している矛盾や不確定さを一段高い見地から考えられるようにし、結果としてより大きな研究進捗に繋がることを目指す。
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Causes of Carryover |
当初は、セントロメア競合アッセイを組み合わせた実験を大規模に進めて研究を完成させる計画であったが、遺伝解析の上で矛盾点が生じて体規模展開を一時停止し、細胞株自体の遺伝学的バックグラウンドの再確認や、過去に遡っての同様株の作成し直しなど、昨年度までの研究内容に一部立ち戻るかたちになったため、当該年度の実支出額が当初の見込みよりも少なくなった。次年度も同様のアプローチを継続するが、現状の理解が得られた段階で自然と大規模展開につながり、次年度で研究を完了させるため、次年度使用額はその実施に充てられる。
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Research Products
(7 results)