2021 Fiscal Year Research-status Report
Understanding the mechanism underlying splicing termination with mRNA re-splicing repressor
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21K06024
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
前田 明 藤田医科大学, 医科学研究センター, 教授 (50212204)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遺伝子発現制御 / スプライシング / 癌 / TSG101 / mRNA再スプライシング / エクソン接合部複合体(EJC) / mRNA品質管理 / スプライシング完了機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞増殖に必須であるTSG101遺伝子は、癌細胞特異的に異常スプライシングされていることが知られていた。正常細胞では起こらない、この大きく離れた弱い選択的スプライス部位間での異常スプライシングを合理的に説明する仮説『癌細胞における成熟mRNAの再スプライシング現象の存在』を提起し、この仮説をRNase R存在下での転写物のRT-PCR解析で証明した(2012年)。 この癌特異的なmRNA再スプライシング現象が、正常細胞で無秩序で起こったならば、深刻な害を及ぼすことは明白であるから、一旦完成された成熟mRNAは再びスプライシングされないような仕組みがあると予想できる。この仕組みの解明が、まだ未解決の重要問題「細胞核はどうしてmRNA前駆体スプライシングの完了を知るのだろう?」の証明に直接つながる。この未解決問題の証明こそが、本研究課題の目的である 最近、mRNA再スプライシングを抑制する蛋白質因子の同定に成功したことが、この証明のブレイクスルーとなった。成熟mRNAのエクソン接合部に特異的に結合するエクソン接合部複合体(EJC, Exon Junction Complex)の形成の中核となる3因子eIF4A3, MAGOH, Y14/RBM8Aが、このmRNA再スプライシング抑制因子の本体だった。 この成果は、日本分子生物学会年会(2019年)と国際RNA学会年会(2020年)で発表され、専門家からも高い評価を得ることができた。一方、国際一流雑誌をめざした論文発表は、追加データの補足ならびにデータベースへのデータ登録などに時間がかかり、予想以上に難航したが、最終的にはInt. J. Mol. Sci.誌に出版することができた(2021年)。この事実は、EJC結合がmRNAの品質管理機構に重要な役割を果たしていることを示し、さらにそれが正常なスプライシング完了のシグナルとなっていることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究を始める動機付けであり、かつ研究進展のブレークスルーとなった成果、すなわちmRNA再スプライシング抑制因子としてのEJC中核因子の同定は、国内外の学会年会で発表したが、その論文発表が本研究課題の初年度の最も重要な目標であった。ほとんどの実験を担当してくれたのは、日本新薬から派遣された大谷勇太研究生であったが、2年の期限をもって会社に戻り、査読者の要求した実験は、新しく赴任した藤田賢一助教が行った。このような事情もあり、予想より時間がかかったが、初年度(2021年)内に出版できて安心した。 仮説「EJCはスプライシング完了のシグナルになっている」を証明する準備としては、再スプライシングがしっかりと検証できるよう、スプライス部位間が短く、かつスプライシング効率のいいmRNA前駆体が必要である。エキシトロン(Exitron; Exonic Intron)と新しく命名された、コーディング・エクソン内に埋没しているイントロンに関わるスプライシングが、まさにmRNA再スプライシングの極小モデル基質となるだろう。なぜなら、mRNA再スプライシング抑制因子であることが判明したEJC中核因子をノックダウンすると、HNRNPM mRNA前駆体のエキシトロンを除外するスプライシングが顕著に促進したからだ。私たちは、スプライシングが完了した成熟mRNA上の再スプライシングによって、エキシトロンが取り除かれると予想しているが、まず最初に、この予想を厳密に証明することが重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
エキシトロンが成熟mRNA上の再スプライシングによって取り除かれることを証明する。以下の二つの方法を計画している。 (1)Carmo-Fonseca教授が開発したクロマチン画分(転写直後の転写物を反映)と核質画分(転写後の転写物を反映)の調製方法を用い、両画分でRNA-Seqデータを比較する、さらに該当のエキシトロンについてはRT-PCRで解析する。この方法により、mRNA再スプライシング現象であるエキシトロンが転写後に遅れてスプライシングされるか(Post-transcriptional splicing)、転写中に同時にスプライシングされるか(Co-transcriptional splicing)が区別できるだろう。予備的な結果であるが、両画分でのRNA-Seqデータベースが利用し、既に同定されているエキシトロンを調査すると、興味深いことに、エキシトロンによりスプライシングされる様式が違った。転写後に遅れてスプライシングされ、かつEJC中核因子ノックダウンでスプライシングが促進されることが確認できたHNRNPM mRNA前駆体のエキシトロンをモデルとして、解析を進める方針である。 (2)クロマチン画分と核質画分を用いた分析は、両核分の成分が厳密に分離しているわけではないので、明確な結果がでない可能性がある。その欠点を補完する方法として、藤田賢一助教が時系列スプライシング解析法を考案してくれた。再スプライシング産物を経時的に解析するために、ウリジンアナログである4SUを細胞に取り込ませて標識し、経時的にRNAを採取する。4SUを標的としてビオチン標識およびストレプトアビジンを用いて、新生RNAを精製し、次世代シークエンス解析することで、スプライシング状態の経時変化を解析する。得られた時系列データから、スプライシングが完了したmRNAが再スプライシングされてエキシトロンは除外されることが証明できる。
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Causes of Carryover |
平成3年度(2021年度)は、新型コロナウイルス感染症の拡大のために、海外渡航ができなくなり、予定していた国際会議の出席を断念した。その経費(参加費、旅費、宿泊費の約45万円)が次年度に繰越になった。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Spliceostatin A interaction with SF3B1 limits U1 snRNP availability and causes premature cleavage and polyadenylation.2021
Author(s)
R. Yoshimoto, J.K.C. Shrestha, T. Schneider-Poetsch, M. Furuno, A.M. Burroughs, S. Noma, H. Suzuki, Y. Hayashizaki, A. Mayeda, S. Nakagawa, D. Kaida, S. Iwasaki, M. Yoshida
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Journal Title
Cell Chem. Biol.
Volume: 28
Pages: 1356-1365
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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