2021 Fiscal Year Research-status Report
リボソームタンパク質の希少修飾ヒスチジンメチル化を介した新規翻訳制御機構の解明
Project/Area Number |
21K06026
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松浦 絵里子 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30534507)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リボソーム / 翻訳制御 / 翻訳後修飾 / ヒスチジンメチル化 / プロテオスタシス |
Outline of Annual Research Achievements |
翻訳装置リボソームを構成するリボソームタンパク質は翻訳後修飾 (以下、修飾と略す)を受けことが知られている。リボソームタンパク質の修飾によってリボソームの機能が調節され、最終的にタンパク質合成を制御するであろう、という発想は比較的単純なものである。しかしながら、その実例は驚くほど乏しいのが現状である。我々はヒトにおいてリボソームタンパク質RPL3 が希少修飾であるヒスチジン残基のメチル化を受けることを発見した。さらに、その修飾酵素であるMETTL18 ノックアウト細胞では、チロシンコドン特異的にリボソームの翻訳速度が促進していることを見出した。これらの予備的知見は、リボソームにおこる希少修飾がタンパク質合成の速度を調節するという可能性を示すものである。本研究ではこの知見を更に拡大展開し、リボソームタンパク質の修飾を介した翻訳制御機構を解明する。またその生物学的意義を明らかにする。特に、リボソームプロファイリング法やSILAC 法を応用した網羅的解析を組み合わせ、この問題にアプローチする。本研究によりリボソームタンパク質の修飾を介したタンパク質恒常性 (プロテオスタシス)制御が明らかになると期待される。 2021年度は主にSILAC 法を応用した網羅的解析に注力して研究を進めた。その結果、METTL18ノックアウト細胞では、チロシンコドンを多く含むタンパク質が細胞内で凝集していることが明らかとなった。したがって、METTL18ノックアウト細胞では、RPL3のメイル化消失した結果、チロシンコドンでの翻訳速度が速くなり、チロシンを多く含むタンパク質のFoldingが不適切になっていることが示唆された。この内容を論文にまとめ投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は前半はSILAC実験の実施とデータ解析を行い、研究計画の2題目のうちの一つで期待される結果が得られた。これまでに論文を投稿し、リバイス実験に取り組んだ。これまでの結果と合わせ、その内容を論文にまとめることができたのは、大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
METTL18によるリボソームタンパク質のヒスチジンメチル化がチロシンコドン特異的なリボソームの翻訳速度を制御するという新たな発見を示すことができた。一方で、METTL18がRPL3をいつ、どこで、どのようにヒスチジンメチル化しているのかは不明である。構造生物学的な知見から、METTL18とRPL3の結合がリボソームアッセンブリーの中間体で起きるであろうと推測できるため、今後は細胞からMETTL18とRPL3の複合体を精製し、その構造やそこに含まれるタンパク質を明らかにするこでMETTL18によるRPL3のヒスチジンメチル化機構を明らかにする。
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