2022 Fiscal Year Research-status Report
Transportin-1が担う非古典的核輸送機構解明に向けた構造生物研究
Project/Area Number |
21K06031
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
深井 祥子 (藤間祥子) 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (40363535)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 構造生物学 / 核輸送 / 結晶構造解析 / クライオ電子顕微鏡解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、典型的な核輸送シグナル配列を持たないカーゴ蛋白質(PPARg、 ZFTA(別名C11orf95)-RelA)の核輸送受容体Transportin-1が輸送するその機構を構造生物学的に明らかにすることを目的とする。2つのカーゴ複合体の構造決定を決定する計画で、1つは強度クラスタリングを用いたX線結晶構造解析法、もう1つはクライオ電子顕微鏡単粒子解析法である。それぞれの構造研究について研究実績を報告する。 ZFTA(C11orf95)-RelAの核輸送機構の解明研究では、ZFTAへの亜鉛配位が及ぼすTransportin-1結合の評価を目的に研究をすすめた。まず、結合実験のために調製した高純度ZFTAの亜鉛結合率をICP-MSを用いて評価した。結果、これまで用いていたZFAのZinc finger構造部分のみでは亜鉛の配位率が低く、安定な亜鉛配位構造の維持には、Zinc finger構造を含むより広範領域が必要であることを明らかにした。これまでの研究の成果をまとめて2報論文を執筆した。1報は現在審査中であり、もう1報は投稿準備中である。 PPARg の核輸送機構解明に向けた研究では、クライオ電子顕微鏡単粒子解析法により3.8Å分解能の密度マップを得ることに成功し、複合体構造を決定した。Transportin-1は、PPARgのDNA結合ドメイン、その後に続くヒンジ領域にかけて広範囲を認識して結合することを明らかにした。得られた構造と過去の報告構造を比較したところ、決定構造からTransportin-1が持つ新しい分子認識機構であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請計画ではTransportin-1と2つの異なるカーゴ蛋白質・ペプチド複合体の構造解析および機能解析を目指した研究を計画した。2年目となるR4年度で全ての構造決定が成功した。 ZFTA複合体に関しては、第一著者、責任著者としての論文を執筆し、現在投稿準備中である。また、構造決定にあたり、新しい解析方法の開発と評価に取り組み、共著者として論文を執筆し投稿した。現在revise中である。PPARg複合体に関しても、目標分解能には届かなかったが、電子顕微鏡解析における平均的な分解能での構造決定に成功した。現在、生化学および細胞生物実験を行い決定構造の評価を行なっている。また、論文執筆も並行して進めている。 以上の理由から、当初の計画に概ね沿ったかたちで研究が進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ZFTA複合体に関しては、現在得られている成果の論文発表を第一の目標にしてすすめる。また、R4年度に明らかにした、亜鉛を安定に配位させるドメイン構造の決定と、Transportin-1複合体との構造決定、亜鉛の配位がTransportin-1の結合に及ぼす効果などを生化学、物理化学、構造生物学の観点から明らかにする。 PPARg複合体に関しては、引き続き決定した電子顕微鏡構造の評価を生化学、細胞生物学アプローチから行い、論文発表を目指す。
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Causes of Carryover |
R4年度は、構造解析や論文執筆に多くの時間を充てたため、当初予想していたよりも実験による支出が少なかった。次年度に使用に充てた額は、R4年度に決定した構造の評価および論文掲載費に充てる計画である。
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Research Products
(3 results)