2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K06034
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石橋 洋平 九州大学, 農学研究院, 助教 (90572868)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ステロール / 脂質過酸化 / 細胞死 / FSP1 / ラビリンチュラ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
ステロールは真核生物にとって必要不可欠な脂質であるが、その構造は生物種によって異なる。進化の過程で特定のステロールを取捨選択したと考えられるが、構造の違いがステロールの機能に何をもたらすのか、その詳細は不明である。申請者はこの問いを追究するための新規モデル生物としてラビリンチュラ類を提案する。この微生物は多様な構造のステロールを合成する能力を有しており、代謝経路改変により特定のステロールを選択的に欠損させ、その機能を比較・評価することが可能である。この系を活用し、ステロールの構造に依存した新しい細胞分裂、細胞死の制御メカニズムが存在する可能性を見出している。本研究ではステロールが介在する細胞分裂・細胞死の分子基盤の解明を通じて、ステロールの構造的違いが司る生命機能に迫ることを目的としている。植物ステロール合成の責任酵素SMT1を欠損する株は破裂を伴う細胞死が起こる。野生株とSMT1欠損株のRNAシーケンスを行い、細胞死に関与する遺伝子を探索した結果、フェロトーシスの制御に関与するFSP1の発現量がSMT1欠損株において大幅に上昇することを見出した。フェロトーシスは鉄イオンに依存した脂質過酸化物の蓄積により引き起こされる細胞死と定義される。ラビリンチュラ類は高度不飽和脂肪酸を豊富にもつことを大きな特徴とする為、脂質過酸化のリスクが高い状態にあると考えられる。むしろ、フェロトーシスがなぜ起きないのか、という疑問が生じていたが、その制御機構として特定の構造をもつステロールが関与する可能性が示された。今後、ステロールの構造と脂質の過酸化、フェロトーシスを調査対象として研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではステロールの構造的違いによって制御される細胞分裂および細胞死のメカニズムの解明を目的としている。今年度は、RNAシーケンスにより細胞死に関連する可能性のある重要な因子を見出すことが出来たことから、おおむね順調であると考えている。細胞分裂に関しては、細胞骨格の可視化などを試みており、その動態や局在を見ることで何かのヒントが得られないかと試行錯誤している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
ステロール構造の変化に伴う細胞死のメカニズム解明に関しては、フェロトーシスという細胞死である可能性が示されているため、今後はステロールとフェロトーシスとの関係性を検証することを目指す予定である。具体的にはフェロトーシスの抑制に関与するGPX4の同定と欠損株の作製、機能解析を行う。また、フェロトーシスの活性化剤または阻害剤の効果を検証する。脂質過酸化の状態を調べるため、各種蛍光プローブや質量分析計を用いた解析を行う。細胞分裂異常に関しては、引き続き細胞骨格の可視化を試みるとともに、トランスクリプトーム解析を実施し、細胞分裂関連遺伝子の発現変動解析を行う。
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Causes of Carryover |
13,439円が次年度使用額であるが、この金額では購入できる物品も限られるため、次年度に本当に必要なものを購入することに使用する方が望ましいと考えた為。よって、この予算は物品費として使用する予定。
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