2023 Fiscal Year Annual Research Report
GCase受容体の構造生物学ーリガンドの認識機構と結合シグナルの分子内伝達機構
Project/Area Number |
21K06044
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
児玉 昌美 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30512248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 治夫 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (40292726)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | グアニル酸シクラーゼ受容体 / ナトリウム利尿ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたる今年度は、これまでの研究成果の公表に力を入れ、血圧・体液バランスの維持に不可欠なGC-A受容体のLBドメインとナトリウム利尿ペプチドの1つであるANP複合体のX線結晶解析の結果を著作論文として発表した(FEBS J. (2024) 291:2273-2286.)。この論文においては、野生型ANPのみならず変異型ANPとGC-A受容体のLBドメインの複合体の構造についても高分解能で解析し、アミノ酸配列の上では規則性が見当たらない1分子のANPが、「点対称」に向き合った2分子のGC-A受容体に結合する際、「擬似的に点対称」の形をとることを世界で初めて明らかにした。またDNP(ヘビ毒由来のナトリウム利尿ペプチド様ペプチド)とGC-A受容体のLBドメインの複合体の構造解析から、DNPがANPより強固に結合する構造学的基盤を明らかにした。これらの結果は、心不全のための新規創薬に大いに役立つことが期待できる。 また研究においても大いに進展があった。GC-A受容体LBドメインにはANP(およびBNP)が、GC-B受容体LBドメインにはCNPが結合する。互いに高度な類似性を持つ受容体と基質だが、それぞれの受容体は的確に自身の基質を識別し結合する。この識別機構を明らかにするためには、GC-B受容体のLBドメインとCNPの複合体の構造解析が必須になるが、GC-B受容体LBドメインは糖鎖修飾を受けるため、X線結晶解析に必要な結晶の作成が困難であった。そこでGC-A受容体LBドメインとANPの複合体については、Cryo-EM単粒子解析によって立体構造の決定に成功した。現在モデリングと構造精密化を行っている最中であるが、今回、Cryo-EM単粒子解析による立体構造の決定が可能になったことで、更なる困難が予想されるGC-A受容体全体とANPの複合体の構造解析に向けても一層の弾みがついた。
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