2023 Fiscal Year Research-status Report
B細胞共受容体の自己抗原認識機構と自己免疫疾患抑制の構造相関
Project/Area Number |
21K06045
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
沼本 修孝 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任准教授 (20378582)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / クライオ電子顕微鏡 / シグナル伝達 / 自己免疫疾患 / B細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、B細胞抑制共受容体CD72と自己抗原Sm/RNPとの複合体の立体構造を決定し、その構造情報に基づき特異的な分子認識機構を解明する。研究三年目の2023年度は、以下の通り研究を実施した。 1. ヒト由来CD72リガンド結合ドメインの完全長での結晶構造解析 ヒト由来CD72リガンド結合ドメインについてはこれまで調製が困難であり、長いループ部位を短絡させたコンストラクトでのみ結晶構造解析に成功していた。2023年度に、ループ部位を保持した完全長としてのリガンド結合ドメインの高純度大量調製法を確立でき、これの結晶構造解析に成功した。得られた構造では、依然としてループ部位の一部はdisorderしておりモデル化が困難であったが、CD72のリガンド認識機構をより詳細に議論できるようになった。 2. ヒト由来CD72リガンド結合ドメインとSm/RNPとの相互作用解析と複合体試料の調製 ループ欠損コンストラクトと、完全長のコンストラクトにおけるSm/RNPなどのリガンド分子との親和性の評価を、表面プラズモン共鳴法とELISA法により行った。ループ欠損コンストラクトでは顕著にリガンドとの親和性が低下しており、ループ部位がリガンド認識に一部関与していることが示唆された。完全長コンストラクトが安定的に調製できるようになったため、Sm/RNPとの複合体試料の調製と構造解析を試みたが、親和性が比較的低く、通常のゲル濾過カラムクロマトグラフィー等の方法では構造解析を行うに十分な安定性を持つ複合体の調製が難しいことがわかった。そこで強制的に複合体に架橋を導入して安定させる手法(GraFix法)での複合体試料調製を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的であるCD72とSm/RNPとの複合体の立体構造決定に向け、長らく困難であったヒトCD72リガンド結合ドメインの完全長での高純度かつ大量の試料調製条件が確立でき、これによって完全長コンストラクトでの結晶構造解析が高分解能で達成できた。クライオ電子顕微鏡でのSm/RNPとの複合体での構造解析に向け、CD72単独での高精度構造情報が取得出来たことは意義深く、Sm/RNPとの相互作用解析によって特定のループ領域が分子認識に重要と思われる結果も得られ、分子認識機構の解明に大きく寄与した。 研究最終年度の予定であった2023年度中に研究代表者の異動が決まったため、実験環境の再整備などに時間を要し当初の予定通り実験を進めることが難しい状況となったため、補助事業期間を延長することとし、本年度中にSm/RNPとの複合体試料の調製条件を確立してクライオ電子顕微鏡での構造解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間の最終年度となる本年度は、ヒト由来CD72リガンド結合ドメイン(完全長)とSm/RNPとの複合体の構造解析に集中して取り組む。試料調製を行う組み合わせを絞り込み、安定な複合体形成条件を効率的に探索する。安定な複合体試料が得られれば直ちにクライオ電子顕微鏡による単粒子構造解析を行う。
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Causes of Carryover |
昨年度中に研究代表者の異動が決まったため、研究環境の再整備等に時間を要し当初の予定通り実験を進めることが難しい状況となったため、主に試薬等の物品購入費が当初計画より少なくなった。 補助事業期間の延長を行い、本年度にあらためて試薬やクライオ電子顕微鏡用グリッド等の消耗品購入費として使用する予定である。
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