2021 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜リン脂質フリッパーゼATP11Cの膜脂質環境におけるの構造機能解析
Project/Area Number |
21K06064
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中西 華代 名古屋大学, 細胞生理学研究センター, 研究員 (00397473)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リン脂質輸送体 / P型ATPase / 膜タンパク質 / クライオ電子顕微鏡 / 立体構造解析 / フリッパーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト細胞膜リン脂質フリッパーゼATP11Cは、phosphatidylserine (PS)を外葉から内葉へ輸送する。この酵素がリン脂を脂質二重膜から取り込む輸送反応を根本的に理解するには、立体構造に加え、膜貫通領域と周縁リン脂質の相互作用、脂質二重膜自体の構造変化を精査する必要がある。そこで、本研究はATP11CをPSナノディスクに再構成して立体構造解析と酵素学的解析を行い、PSを脂質二重膜の外葉からどのように取り込み内葉に放出するのかを調べた。 MSP1D1を用いたリン脂質ナノディスクを迅速かつ・簡便に再構成する方法を独自に確立するとともに、調製したナノディスクを用いPSに依存したATP活性を測定して、界面活性剤ミセル中とは酵素学的性質が異なることを示した。さらに、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析を行い、リン酸アナログ阻害剤フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ベリリウム(BeF)を結合した二つの中間体構造を、それぞれ3.4Å、3.9Å分解能で決定した。これら二つの構造は、AlF結合中間体がリン脂質輸送経路が閉じたE1P状態、BeF結合中間体がPSを輸送経路内に閉塞したE2P状態であった。申請者が前の研究で決定した界面活性剤ミセル中のBeF結合中間体は、リン脂質輸送経路を細胞膜外葉側に開いた状態であったのに対し、PS飽和ナノディスクでは輸送経路が閉じた状態、すなわち反応サイクルの次のステップの状態であった。加えて、PS飽和ナノディスクのBeF結合中間体では、2番目の膜貫通ヘリックス周辺の脂質二重層内葉が細胞質側に突出しており、近傍の輸送経路内に閉塞されたPSを放出する準備段階にあることが予測された。以上の成果をまとめた投稿論文は受理され現在印刷中である(J Biol Chem (2021)298(1):101498, in press)
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Research Products
(3 results)