2022 Fiscal Year Research-status Report
核様体ダイナミクスに着目したミトコンドリア形態制御の新視点研究
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21K06066
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石原 孝也 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (70611862)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | mtDNA / 核様体ダイナミクス / ミトコンドリアダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の研究からミトコンドリアの形態はダイナミックに変化していることが分かり、その生理的意義についても理解され始めている。またミトコンドリアが保持する独自のゲノムであるmtDNAは核様体という構造を形成し、ミトコンドリア内膜に局在してダイナミックにその分布を変化させている。これまでの申請者らの研究成果からミトコンドリアの膜とゲノムが協調的に働き、ミトコンドリア機能を制御することが明らかになってきたが、その分子メカニズムの理解は進んでいなかった。 今年度は、ATAD3というミトコンドリア内膜タンパク質が核様体の動態制御に関わっていることを明らかにし、研究成果として報告した。本研究成果ではATAD3がミトコンドリアの内膜に沿って核様体を輸送していること、さらにこの機能にはATAD3の加水分解活性と多量体を形成するドメインの両方が関わっていることを明らかにした。また、ATAD3を発現抑制した細胞では、ミトコンドリア内の核様体の大きさや分布が変化しており、呼吸に必要な呼吸鎖複合体を形成するいくつかのタンパク質が増加していた。このことから、核様体の動きや配置の制御がミトコンドリアの活性を調節していることがわかった。 また、核様体のダイナミクスを理解するうえで重要な構造とその形成メカニズムの研究も進捗している。本研究からは、核ゲノムの構造を制御するメカニズムに類似したシステムがmtDNAの制御機構にも備わっていることを明らかにできつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
すでに学術誌に発表した研究成果だけでなく核様体の構造と形成に関わる分子メカニズムについての研究も本研究期間中にまとめられる見込みがついた。本申請研究によって核様体のダイナミクスに関わる知見を着実に積み重ねることができており、研究領域の発展にも貢献できている。今後はさらに、生理・病態に関わる研究に展開できるように、準備を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究成果とは別の関連因子の解析も進んでおり、研究成果としてまとめながら、核様体ダイナミクスの全体像を明らかにすべく、計画的に研究をすすめる。また、次年度より申請者は島根大学の医学部生命科学講座へと所属を移す。これまでの基礎研究を継続し、さらに病態理解へと研究を展開する環境が整いつつある。今後はさらに研究を推進し、本研究の目的を達成できるようにつとめる。
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Causes of Carryover |
今年度は投稿した論文の追加実験に想定していたよりも多くの時間を費やすことになり、実施する計画だった研究の一部を次年度に持ち越すことになった。それら計画していた実験は次年度に滞りなく実施することで、本研究を推進する予定である。
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