2021 Fiscal Year Research-status Report
ErbB4の部位特異的糖鎖解析による糖鎖機能の解明
Project/Area Number |
21K06083
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
高橋 素子 札幌医科大学, 医学部, 教授 (00303941)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤谷 直樹 札幌医科大学, 医学部, 助教 (10374191)
上原 康昭 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40882907)
長谷川 喜弘 札幌医科大学, 医学部, 講師 (90643180)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 糖鎖 / ErbB / ErbB4 / EGFR / 増殖因子受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ErbBファミリーは、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4の4つの分子からなる増殖因子受容体ファミリーである。いずれもがんの発症・進展に深く関与していると考えられている。研究代表者はこれまでにEGFRとErbB3の糖鎖解析を行い、特定の糖鎖構造が機能に関係している可能性を見出した。本研究では、ErbB4の部位特異的糖鎖構造解析を行い、糖鎖によるシグナル制御機構を明らかにすることを目的とする。令和3年度の研究では、以下の結果が得られた。 1)ErbB4の部位特異的糖鎖付加率および糖鎖構造:CHOK1細胞で発現させたErbB4細胞外ドメインを精製し、LC-ESI-MS/MSを用いて11か所の糖鎖付加部位における糖鎖付加率と糖鎖構造を解析した。N113、N333、N523の3か所はほぼ100%の糖鎖付加率を示した。また、N113、N228、N523の3か所は高マンノース型糖鎖、それ以外の8か所は複合型糖鎖が付加することがわかった。N333上の糖鎖は、他の複合型糖鎖と比較してフコース付加が少ないという特徴がみられた。 2)ErbB4の機能に重要な糖鎖の同定:CHOK1細胞を用いてErbBの野生型および糖鎖欠損変異体の安定発現細胞を樹立した。ヘレグリン刺激に対するシグナルを比較する予定である。 3)ErbB4細胞外ドメインの糖鎖欠損変異体の性質の評価:ErbB4の細胞外ドメインの野生型および糖鎖欠損変異体の大量調製を行った。ErbB4の細胞外ドメインはEGFシグナルとヘレグリンシグナルの両方を抑制することを確認した。野生型と糖鎖欠損変異体の比較を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、「ErbB4の糖鎖構造解析と糖鎖欠損変異体のシグナル解析」を計画した。 1)ErbB4の部位特異的糖鎖付加率および糖鎖構:ErbB4細胞外ドメイン(sErbB4)にmyc-Hisタグを付加したものをCHOK1細胞で発現させ、カラムクロマトグラフィーにて精製した。LC-ESI-MS/MSを用いて、11か所の糖鎖付加部位における糖鎖付加率と糖鎖構造を解析した。糖鎖構造解析については当研究室の藤谷直樹助教が担当した。ErbB4の11カ所の糖鎖付加部位のうち、N113、N333、N523の3か所はほぼ100%の付加率を示した。また、N113、N228、N523の3か所は主に高マンノース型糖鎖が付加しており、それ以外の8か所は主に複合型糖鎖が付加することがわかった。N333上の糖鎖は、他の複合型糖鎖と比較してフコース付加が少ないという特徴がみられた。 2)ErbB4の機能に重要な糖鎖の同:CHOK1細胞を用いてErbB4糖鎖欠損変異体の安定発現細胞を樹立した。ヘレグリン刺激に対するシグナルを比較する予定であるが、まだ結果が得られていない。課題として、他のErbBと比較してシグナルの定量の条件設定が難しいことがわかった。 3)ErbB4細胞外ドメインの糖鎖欠損変異体の性質の評価:ErbB4の細胞外ドメインはEGFシグナルとヘレグリンシグナルの両方を抑制することを確認した。今後、2)で特定された糖鎖を欠損した変異体を作製し、そのシグナル抑制作用と物性を調べる予定である。 ErbB4糖鎖欠損変異体のシグナル解析など、予定より遅れている項目もあるが、部位特異的糖鎖解析はほぼ完了しており、全体として研究計画自体は順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、 1)ErbB4糖鎖欠損変異体のシグナル解析 ErbB4の11か所の糖鎖付加部位に変異を導入した糖鎖欠損変異体の安定発現細胞を樹立し、ヘレグリン刺激に対する下流シグナルを比較する。他のErbBと比較して、リガンド刺激によるシグナルの定量の条件設定が難しいため、細胞密度、血清除去の条件などを検討し、安定したデータが得られるよう工夫する。その上で、糖鎖欠損変異体の細胞表面の発現量、リガンド親和性、二量体形成能を検討し、シグナル制御メカニズムを明らかにする。 さらに、MCF7細胞の内在性のErbB4をノックアウトした上で糖鎖欠損変異体を導入する、あるいは糖鎖欠損変異体をノックインするなどして、他のErbBとの相互作用も観察する。 2)ErbB4細胞外ドメインの糖鎖欠損変異体の性質の評価 ErbB4の細胞外ドメインはEGFシグナルとヘレグリンシグナルの両方を抑制することを確認済みである。今後、糖鎖を改変した変異体を作製し、シグナル抑制作用を検討する。また、糖鎖の改変がErbB4細胞外ドメインの物性に与える影響を調べる。物性解析としては、X線結晶構造解析、示差走査熱量測定を考えている。その他、リガンドとの相互作用、ErbB4細胞外ドメイン同士の相互作用、あるいはErbB4細胞外ドメインの構造変化のしやすさ(柔軟性、flexibility)の指標を検討している。
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Research Products
(7 results)