2021 Fiscal Year Research-status Report
一次繊毛先端部におけるアンテナ機能制御と繊毛病発症の分子機構
Project/Area Number |
21K06084
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
永井 友朗 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (10723059)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 一次繊毛 / 上皮極性 / 中心体 / 集団移動 / 細胞のパターニング培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
一次繊毛は細胞外の様々なシグナルを受容するアンテナとして機能し、その欠損は繊毛病と呼ばれる遺伝性疾患群を引き起こす。一次繊毛のアンテナ機能を担う受容体などのタンパク質は、基部の基底小体で選別されて繊毛内輸送(IFT)によって先端方向へ輸送される。一次繊毛先端部ではIFTの輸送方向の切り替えと、受容体から下流分子へのシグナル伝達が行われていると考えられるが、一次繊毛先端に集積するタンパク質がどの様に繊毛のアンテナ機能を制御しているかは不明であり、それらのタンパク質の変異による繊毛病発症機構もほとんど分かっていない。申請者は以前に一次繊毛先端タンパク質CEP104が一次繊毛の伸長と一次繊毛依存的なヘッジホッグシグナルの伝達に必須であることを見出した。CEP104は繊毛病の一つであるジュベール症候群の原因であり、CEP104が変異した患者では嚢胞腎や肝線維化など、極性異常や上皮間葉転換(EMT)などの上皮組織の恒常性破綻が見られることが明らかになっている。本研究は、CEP104をはじめとする一次繊毛先端タンパク質によるアンテナ機能の制御機構と、上皮細胞の恒常性維持における役割を明らかにすることで、一次繊毛先端タンパク質の変異による繊毛病発症の分子機序の解明を目指す。 本年度は、上皮細胞の機能の指標となる極性や細胞間接着依存的な集団移動を測定するためのマイクロパターニング培養法を導入・確立した。中心体と核の位置変化の測定を通じて、実験的なEMT誘導に応じた上皮極性の消失を定量化した。さらに、細胞集団のパターニング培養によって、従来の解析法では困難であった細胞集団の数や移動方向を均一化することに成功し、当研究課題の遂行に必要な実験系を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、一次繊毛先端タンパク質の欠損による繊毛病発症機構の解明を目指して、細胞のマイクロパターニング培養技術を用いた上皮細胞の機能性を解析する実験方法の確立に注力した。それによって、上皮細胞の極性を定量化する実験系の確立に成功した。それに加えて、上皮細胞の集団移動のパターニングにも成功した。今後、一次繊毛先端タンパク質のKD・KO細胞をこれらのパターニング培養に適用することで、一次繊毛先端タンパク質の新たな生理機能の解明につながると見込んでいる。研究計画に記載した新規タンパク質の探索に関するプロテオーム解析は十分に進んでいないが、上皮細胞の機能を解析する実験系の確立が進んだので、研究はおおむね順調に進んでいるものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに上皮細胞のパターニング培養に成功したので、今後は既知の一次繊毛先端タンパク質のKD・KO細胞を用いた実験を中心に進めていき、並行して新規一次繊毛先端タンパク質の探索実験を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は細胞のパターニング実験に注力したため、当初着手予定であった一次繊毛先端タンパク質のプロテオーム解析にかかる経費を次年度に繰り越した。
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