2021 Fiscal Year Research-status Report
心疾患に関連する新奇生理活性物質 D-グルタミン酸の分解酵素に関する研究
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21K06085
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
片根 真澄 北里大学, 薬学部, 准教授 (90383653)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | D-グルタミン酸シクラーゼ / D-グルタミン酸分解酵素 / D-グルタミン酸 / 5-オキソ-D-プロリン / D-ピログルタミン酸 / 心臓 / D-アミノ酸 / 比色定量法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、遊離の D-グルタミン酸(D-Glu)の分解酵素として最近同定した、哺乳類 D-Glu シクラーゼ(DGLUCY;D-Glu を 5-オキソ-D-プロリン[5-オキソ-D-Pro]と水に分解する反応を可逆的に触媒する酵素)の代謝機構の全貌を解明することである。この目的に向けて、DGLUCY 活性の迅速で簡便な測定法の開発のほか、DGLUCY の構造機能相関の解明を試みる。 2021 年度は、吸光度計を用いた比色定量に基づく迅速で簡便な DGLUCY 活性の新規測定法について解析した。我々は既に、触媒としての 1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)存在下、5-オキソ-D-Pro が 2-ニトロフェニルヒドラジン塩酸塩(2-NPH)で誘導体化され、アルカリ溶液中で濃い紫色(吸収極大波長:535 nm)を呈することを見出していた。そこで、2-NPH による 5-オキソ-D-Pro の誘導体化に対する温度および反応時間の影響、EDC 濃度の影響、および 2-NPH 濃度の影響を解析した。その結果、40 mM EDC および 4 mM 2-NPH 存在下、37 度で 30 分間の誘導体化反応が最適であることが明らかになった。 前述した最適化した条件で、比色定量法による 5-オキソ-D-Pro の検量線を作成した。この際、吸光度測定は 96-well および 384-well プレートを用いて行なった。また、コントロールとして、我々が以前に開発した高速液体クロマトグラフィーを用いた測定法(HPLC-UV 法)による検量線も作成した。その結果、96-well プレートを用いた比色定量法が HPLC-UV 法よりも低感度である一方で、384-well プレートを用いた比色定量法は HPLC-UV 法よりも高感度であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の開始当初における研究計画は、主に次の 2 つに大別される。すなわち、(1)吸光度計を用いた比色定量に基づく迅速で簡便な DGLUCY 活性の新規測定法を開発することと、(2)哺乳類 DGLUCY の構造機能相関を解析することである。また、上記(1)の具体的な研究計画は、(1-1)触媒としての EDC 存在下、5-オキソ-D-Pro が 2-NPH で誘導体化される反応の最適な条件を決定すること、(1-2)至適化した条件で 5-オキソ-D-Pro 検量線を作成し、定量限界を決定することで、本法の感度を解析すること、および(1-3)野生型および DGLUCY ノックアウトマウスそれぞれから樹立した培養細胞株の抽出液を酵素源として DGLUCY 活性を測定することで、本法の正確性と頑健性を解析することであった。一方、上記(2)の具体的な研究計画は、(2-1)マウス DGLUCY の全長、N 末側領域のみ、および C 末側領域のみそれぞれを大腸菌で発現させて精製し、それらの DGLUCY 活性を測定することで、N 末側と C 末側のどちらの領域に活性中心が存在するのかを解析すること、(2-2)活性中心を含む領域の三次元構造をコンピュータ内でモデリングし、基質とのドッキングシミュレーション解析により活性中心残基を推定すること、および(2-3)推定したアミノ酸残基にアミノ酸置換変異が導入された DGLUCY を大腸菌で発現させて精製し、その DGLUCY 活性を測定することで、推定したアミノ酸残基が実際に活性中心残基として機能していることを確認することであった。 2021 年度は、主に上記(1)の研究を進め、(1-1)および(1-2)が終了した。すなわち、計画していた研究全体の 25 ~ 30% 程度が進行したと思われる。したがって、本研究は「やや遅れている」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022 年度は、2021 年度に引き続き、吸光度計を用いた比色定量に基づく迅速で簡便な DGLUCY 活性の新規測定法について解析する。具体的には、野生型および DGLUCY ノックアウトマウスそれぞれから樹立した培養細胞株の抽出液を酵素源として DGLUCY 活性を測定することにより、本法の正確性とともに頑健性を解析する。この実験に先立ち、比色定量法が DGLUCY の酵素活性の測定に適用可能かどうかを解析する。すなわち、比色定量法を用いて、大腸菌で発現させて精製したマウス組換え DGLUCY の D-Glu に対する動力学定数を決定し、HPLC-UV 法を用いて決定した値と比較する。 さらに、2022 年度には、哺乳類 DGLUCY の構造機能相関を解析する。具体的には、マウス DGLUCY の全長、N 末側領域のみ、および C 末側領域のみそれぞれを大腸菌で発現させて精製し、それらの DGLUCY 活性を測定することで、N 末側と C 末側のどちらの領域に活性中心が存在するのかを解析する。 2023 年度には、マウス DGLUCY の活性中心を含む領域の三次元構造をコンピュータ内でモデリングし、基質とのドッキングシミュレーション解析により活性中心残基を推定する。また、推定したアミノ酸残基にアミノ酸置換変異が導入された DGLUCY を大腸菌で発現させて精製し、その DGLUCY 活性を測定することで、推定したアミノ酸残基が実際に活性中心残基として機能していることを確認する。
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Research Products
(9 results)