2021 Fiscal Year Research-status Report
細胞内タンパク質動態と細胞応答の1細胞同時計測で解き明かす情報伝達機構の基本原理
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21K06097
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福岡 創 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (50447190)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 蛍光イメージング / 回転計測 / 大腸菌 / 走化性 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸菌は小さな細胞の中に,高等生物と同じようなセンシング能,情報処理能,運動能を有しているが,単純な大腸菌ですら,細胞の応答を細胞内でのタンパク質動態(局在,活性,分子数,相互作用)として理解するには至っていない.本研究は1細胞内FRETや走化性タンパク質の細胞内動態と共に,最終出力のべん毛モーター回転を同時計測することで,大腸菌1細胞における情報伝達を,細胞内のタンパク質動態と細胞応答の相関関係を直接的に理解し,情報伝達の基本原理を細胞内のタンパク質動態レベルで明らかにすることを目的としている.R3年度の研究では,本研究の目的のために,(1)先行して開発を進めていたFRETによる細胞内情報伝達タンパク質(CheYp)濃度とべん毛モーターの回転方向を同時にモニターする系を確立することができた.また,(2)走化性タンパク質CheBの細胞内動態の計測により受容体活性をイメージング可能な系の確立に至った.現在,これらの計測系を用いて,誘引および忌避刺激に対する応答および刺激に対する適応を,細胞内タンパク質の動態ならびに細胞運動を担うべん毛モーターの回転の両側面から計測,解析を行っている.また我々は,(3)無刺激環境下(定常状態)において,細胞極にクラスター化した受容体の自発的な活性化/不活性化が,CheYp濃度の揺らぎを生じ,それが無刺激環境下における細胞運動を制御していることを過去の研究で明らかにしている.我々はR3年度の研究で,走化性システムのリセットを担うCheR/CheBを介した受容体のメチル化レベルの変動が,この受容体クラスターの自発的な活性化/不活性化を生じさせていることを明らかにした.現在,この成果を論文として発表するために準備を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時の研究計画の通り,1)FRETによる細胞内情報伝達タンパク質(CheYp)濃度とべん毛モーターの回転方向を同時にモニターする系の確立,2)走化性タンパク質CheBの細胞内動態の計測により受容体活性をイメージング可能な系の確立およびべん毛モーター回転との同時計測系の確立を行うことができた.また3)走化性システムによる受容体クラスターのメチル化ベルを変動させることによって,受容体クラスターの自発的活性化/不活性を引き起こし,それによって,無刺激環境下における細胞遊泳を制御していることを明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度は,まず研究実績の概要に記述した研究成果(3)受容体のメチル化ベル変動による受容体クラスターの自発的活性化/不活性についての論文を投稿し採択を目指す.また研究成果(1)FRETによるCheYp濃度と細胞応答の同時計測,(2)CheBの細胞内動態と細胞応答の同時計測を元に,細胞外刺激に対する情報伝達を(誘引刺激・忌避刺激に対する応答,またそれらに対する適応過程),細胞内タンパク質の動態と実際の細胞応答の同時計測によって,両者の相関関係を定量解析し,生命に普遍的な細胞内情報伝達の基本原理を,細胞内のタンパク質動態レベルで明らかにしていく.
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