2021 Fiscal Year Research-status Report
液液相分離したリン酸化HP1αのヌクレオソーム結合への機能解明
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21K06100
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
古川 亜矢子 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特任助教 (90453050)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | HP1α / 溶液NMR / 液液相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘテロクロマチンタンパク質のHP1αは、N末テイル(NT)に存在する連続した4個のセリン残基が、カゼインキナーゼ2によりリン酸化されるという特徴がある。このリン酸化によって、ヒストンH3への結合が強くなることや、液-液相分離が起こることが報告されている。NTがリン酸化されない変異体は染色体不安定性を引き起こすため、NTのリン酸化は必要不可欠な機能である。しかしながら、HP1αやHP1αが結合するヒストンH3のN末テイルやリンカーDNAは、天然変性領域で非常に動的に機能しているため、リン酸化HP1α全長の構造やヌクレオソーム上での結合様式、HP1αリン酸化にともなう液-液相分離の役割については不明な点が多い。 本年度は、液-液相分離に関与するリン酸化HP1αの分子内及び分子間相互作用部位の同定を行った。非リン酸化体とリン酸化体で、NTとHR間の分子内相互作用が異なる結果に基づいて作製したHP1αのChoromoShadowDomainを欠失した変異体(HP1αΔCSD)でも、NTのリン酸化によって液-液相分離を起こすことや、リン酸化と非リン酸化体の分子内相互作用の違いを残基レベルで明らかにした。その残基に変異を導入すると、リン酸化体でも液相分離が起こらなかった。また、MDやSAXSによる解析結果と合わせて、リン酸化体が液-液相分離を起こす分子機構が明らかになりつつある。また、リン酸化体のHP1αとK9me3修飾ヒストンH3ペプチドとの相互作用解析も行った。以前行ったNTとChromoDomainのHP1αより結合能が弱い結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの影響及び令和5年度に計画しているヌクレオソームの調製などを行っていたため、計画が少し遅れ気味になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、リン酸化HP1αとK9me3修飾ヒストンH3のペプチドとDNAとの相互作用部位の同定を行う。次に、リン酸化HP1αと結合したK9me3修飾ヒストンH3の10番目セリンのリン酸化反応機構の解析を行う。安定同位体標識したヒストンH3K9me3に非標識体のリン酸化HP1αが結合した溶液に、ATPとリン酸化酵素AuroraBを添加し、セリンのリン酸化を追跡する。リン酸化HP1αが高濃度で液-液相分離を起こしている条件でのリン酸化反応の速度についても解析する。これらを比較することで、リン酸化HP1αのヒストンH3からの解離機構に、液-液相分離がどのように関わっているのかを明らかにする。 続いて、リン酸化HP1αΔCSDとK9me3S10phos修飾ヒストンH3とDNAとの相互作用様式の解明 リン酸化HP1αがH3K9me3に結合した状態でヒストンH3のS10がリン酸化された場合、リン酸化HP1αとの相互作用がどの様に変化するかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナのため、実験計画の変更を余儀なくされたため。 コロナ感染状況の悪化で、国内学会がオンラインになり、旅費が全く使用できなかったため。
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