2022 Fiscal Year Research-status Report
液液相分離したリン酸化HP1αのヌクレオソーム結合への機能解明
Project/Area Number |
21K06100
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
古川 亜矢子 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特任助教 (90453050)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | HP1α / 溶液NMR / 液液相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘテロクロマチンタンパク質のHP1αは、N末テイル(NT)に存在する連続した4個のセリン残基が、カゼインキナーゼ2によりリン酸化されるという特徴がある。このリン酸化によって、ヒストンH3への結合が強くなることや、液-液相分離が起こることが報告されている。NTがリン酸化されない変異体は染色体不安定性を引き起こすため、NTのリン酸化は必要不可欠な機能である。しかしながら、HP1αやHP1αが結合するヒストンH3のN末テイルやリンカーDNAは、天然変性領域で非常に動的に機能しているため、リン酸化HP1α全長の構造やヌクレオソーム上での結合様式、HP1αリン酸化にともなう液-液相分離の役割については不明な点が多い。 本年度は、液-液相分離に関与するリン酸化HP1αの分子内及び分子間相互作用部位の詳細な解析を行うために、濃度を液-液相分離 の起こらない薄い状態から濃い状態まで振ってNMRの測定を行なった。その結果、分子内相互作用から分子間相互作用へ変わる濃度域が明らかになった。さらに、リン酸化体のHP1αとヌクレオソーム中のヒストンH3のN末テイルを模したK9me3修飾ヒストンH3ペプチドとの相互作用解析を行った。前年度に同定した液-液相分離に重要なアミノ酸に変異を導入したHP1αとヒストンH3のN末テイルを模したヒストンH3ペプチドとの結合能は、野生型と比較して変化がなかった。 また、ヌクレオソームを調製するために、ヌクレオソームを構成するヒストンタンパク質H2A,H2B,H4,及び安定同位体標識したH3の発現と精製を行い、193塩基対DNAの調製も行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度に計画しているヌクレオソームの調製などを行っていたため、令和4年度のヒストンH3のリン酸化の研究計画が少し遅れ気味になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、リン酸化HP1αとK9me3修飾ヒストンH3のペプチドとDNAとの相互作用部位の同定を行う。続いて、リン酸化HP1αΔCSDとK9me3S10phos修飾ヒストンH3とDNAとの相互作用様式の解明する。前年度の解析結果を元に、ヌクレオソーム上でのリン酸化HP1αの作用機序を明らかにする。この調製したヌクレオソームにリン酸下HP1α(全長及び変異体)を滴定することで、ヒストンH3テイルの変化を解析する。
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Causes of Carryover |
世界情勢の悪化でNMR用の安定同位体試薬が入手困難であったため。
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[Presentation] ヘテロクロマチン関連タンパク質HP1aのリン酸化による液-液相分離機構の解明2022
Author(s)
古川亜矢子, 米澤 健人, 根上 樹, 吉村 ゆり子, 林 亜紀, 中山 潤一, 安達 成彦, 千田 俊哉, 清水 謙多郎, 寺田 透, 清水 伸隆, 西村 善文
Organizer
日本分光学会NMR分光部会
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[Presentation] リン酸化によるHP1αの液-液相分離機構の解明2022
Author(s)
古川亜矢子, 米澤 健人, 根上 樹, 吉村 ゆり子, 林 亜紀, 中山 潤一, 安達 成彦, 千田 俊哉, 清水 謙多郎, 寺田 透, 清水 伸隆, 西村 善文
Organizer
日本生物物理学会年会