2021 Fiscal Year Research-status Report
Direct measurement of the twisting and bending fluctuations of a single actin filament with SMFPM
Project/Area Number |
21K06102
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
辰巳 仁史 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (20171720)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メカノバイオロジー / アクチン線維 / コフィリン / 量子ドット |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞には、重力などによる外力だけではなく、体内の骨格筋や平滑筋の動きに起因する様々な機械的(力)刺激が作用している。その結果、細胞は、これら力学刺激を受容して、細胞内骨格の形態変化など様々な応答を示す。生体膜や細胞骨格は外部からの力が働き、細胞の成長、分裂、形態が変化して、細胞応答を修飾する。最近では細胞に作用する機械的ストレスの大きな場所に誘引される中胚葉性幹細胞の存在も知られている。このように力の受容は生命科学において重要な地位を締めているが、力の受容を行っている分子機構の多くは未解明の状態である。その最大の理由は、力刺激の感知機構、言い換えるとメカノセンサーの分子実体が多くの場合、同定されておらず、さらにメカノセンサーが細胞の構造や機能に影響をあたえる仕組みの多くが不明な点にある。本研究では量子ドットと偏光一分子(粒子)イメージング顕微鏡を使って、アクチン線維が備えている力の受容の分子的仕組みを解明する。そして、アクチン線維の力学的状態変化がアクチン結合タンパク質分子コフィリンの作用を調節している分子機構を解明する。現在予想される仮説は“アクチン線維は線維の長軸方向に常にねじれており、このねじれの大きさは揺らいでる。外部からの力刺激でアクチン線維の張力が大きくなった時にはこのねじれのゆらぎは抑えられてコフィリンの結合が抑制される。逆に張力が減少し、ねじれが大きい時にコフィリンの結合部位がアクチン線維の表面に現れてコフィリンの結合が起きる。コフィリンの結合数の増加と伴にアクチン線維のローカルな曲げが起き、曲げの閾値を超えると切断が起きる”である。本研究では量子ドットと一分子(粒子)偏光イメージング顕微鏡を使って、アクチン線維のローカルなねじれと曲げを同時計測し、さらにコフィリンの結合を分析することで、上記の仮説を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではアクチン線維一本をガラスカバーグラスに緩やかに固定し、アクチン線維のねじれを評価するためにアクチン線維を発光粒子(量子ドット)で標識する。またアクチン線維の張力を増すために磁気ビーズを結合する。予備的検討から長波長タイプの量子ドットに限っては強い偏光特性があることが判明した。量子ドットの発光の偏光の向きの分析のため方解石プリズムをCCDカメラの前にセットし、偏光の向きに従って画像を二組に分ける。実験においても、偏光の強さが時間とともに変化し、アクチン線維の長軸に沿ってねじれのゆらぎ(角度α)があることが分かった。 アクチン線維に結合した磁気ビーズを電磁石により牽引することで、アクチン線維に張力を発生させる。量子ドットの明るさ変化の分析を行うと、アクチン線維は、ねじれ角(α)の揺らぎと局所的な曲げ(β)の揺らぎが同時に見られ、力付加により、ねじれと曲げの揺らぎが同時に抑制された。これは張力上昇によりねじれ揺らぎの減少があることを示すだけでなく、理論的に予想された、ねじれと曲げの分子レベルでのカップリングを実験的に明らかにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
蛍光標識したコフィリンのアクチン線維への結合がアクチン線維のねじれ揺らぎに依存していることを検証する。アクチン線維をガラス管で切断すると、新たに揺らぐアクチン線維が生まれ、そこにはコフィリンの結合と切断が起きる。アクチン線維のねじれ揺らぎを計測しつつ蛍光コフィリンの結合を分析し、ねじれ揺らぎ(あるいは曲げゆらぎ)の大きい場所に蛍光コフィリンが結合することを検討する。またコフィリンの結合がねじれを引き起こす可能性もあるので同時に検証する。偏光一粒子分析ではアクチン線維の曲げも検討することができる。コフィリンのクラスターが生まれたときにクラスターの端点の曲げの変化を計測し、曲げ(角度β)のアクチン線維の切断における役割を検証する予定である。アクチン線維に磁気ビーズを結合し、力付加をして、コフィリンの結合と切断について、実験を行い、より精密な力の受容とコフィリンの作用の関係を検討する。力付加の大きさ(0.1pN-5pN)を変化させつつ揺らぎの角度変化とコフィリンの結合と切断の分析を行い、アクチンの力受容の感度を推定する。量子ドットはサイズが大きい(約10 nm)のでタンパク質分子の構造変化に影響を与える可能性もありえる。小さい蛍光分子アレクサによるアクチン線維の標識を行う。予備実験ではアレクサ標識アクチン線維についても一分子偏光顕微鏡法が使えることが分かっているので、アレクサによるゆらぎの分析を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
マニピュレータを代替え品で対応したことと、およびタンパク質の購入量が想定よりも少なくできたため。
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