2021 Fiscal Year Research-status Report
色素置換による光合成エネルギー移動制御:色素集団と単量体の共存の重要性を理解する
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21K06104
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
佐賀 佳央 近畿大学, 理工学部, 教授 (60411576)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光合成 / 励起エネルギー移動 / 光収穫タンパク質 / バクテリオクロロフィル / クロロフィル |
Outline of Annual Research Achievements |
天然光合成システムにおいて、光収穫タンパク質は光合成反応に必要な光エネルギーを捕集する重要な色素タンパク質である。これらの光収穫タンパク質には、励起子相互作用している色素集団と励起状態がほぼ局在化している色素単量体が共存し、両者の関係性が励起エネルギー移動に重要となっている場合が多い。そこで、紅色光合成細菌の光収穫タンパク質を主な研究ターゲットとして、結合色素の置換によって、環状に配列している色素集団と色素単量体の機能的関係性を改変・制御し、光機能への影響を明らかにするための研究を推進している。 本年度は、紅色光合成細菌の辺縁光収穫タンパク質light-harvesting complex 2(LH2)においてエネルギー供与体として機能する単量体状態の色素(B800バクテリオクロロフィルa)の改変を主に実施した。第一に、紅色光合成細菌から単離精製したLH2タンパク質からB800バクテリオクロロフィルaを選択的に脱離させたのちに、複数種の異種クロロフィル色素をB800結合ポケットに再構成することに成功し、それらの色素の電子状態やタンパク質との相互作用、ならびにエネルギー受容体であるB850バクテリオクロロフィルaへの励起エネルギー移動を解析した。第二に、紅色光合成細菌から単離精製したLH2タンパク質を酸化剤で処理することで、LH2タンパク質に結合した状態のB800バクテリオクロロフィルaを直接的に3-アセチルクロロフィルaに変換する方法論を確立した。この方法論を用いることで、LH2タンパク質に存在する単量体状態のエネルギー供与体を2種類共存させることにも成功し、このような改変LH2タンパク質についてエネルギー移動経路を含めた励起エネルギー移動ダイナミクスを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
紅色光合成細菌の辺縁光収穫タンパク質LH2のエネルギー供与体であるB800バクテリオクロロフィルaの改変を達成し、エネルギー受容体として機能するB850バクテリオクロロフィルaとの関係性を制御し光機能への影響を順調に解析できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
光収穫タンパク質LH2のB800バクテリオクロロフィルaの改変をさらに進めるとともに、エネルギー受容体である色素集団の吸収帯が短波長シフトした光収穫タンパク質LH3の色素改変に関する研究も推進する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で成果発表を予定していた学会がすべてオンライン開催になったので、学会出張のために使用を予定していた旅費を使用しなかったことが次年度使用額が生じた主な理由である。翌年度は、研究遂行に必要な物品の購入に使用するとともに、成果発表のための学会参加費としての使用、ならびに対面で開催となった学会についてはそのための旅費の使用を計画する。
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