2023 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質構造に基づいたアブラナ科植物の自家不和合性を制御する分子の創出
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21K06110
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森脇 由隆 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70751303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村瀬 浩司 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (50467693)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | タンパク質の立体構造予測 / 自家不和合性 / アブラナ科植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
アブラナ科植物の雌蕊にはSRKと呼ばれるタンパク質分子が、また同植物の花粉表面にはSP11(SCR)と呼ばれる分子がそれぞれ発現している。SRK, SP11の機能が2000年に同定されて以降、各アミノ酸配列の同定と構造決定によって、自家不和合性の詳細な分子機構を解明する動きが始まった。しかし、各配列決定は100以上決定されている一方で、各分子の構造決定は発現精製が非常に困難という性質ゆえに2020年までに当研究グループからの成果を含めわずか2例しか行われていない。そのため、制御する分子の創出に向けて、我々はまず高精度なSRK-SP11複合体のモデリングが必要と位置づけた。偶然にも、2021年に登場した高精度なタンパク質構造予測ソフトウェアのAlphaFold2と、研究代表者が開発に携わったその高機能版であるColabFoldによって、タンパク質構造予測の精度が大幅に向上したことは、この研究を大きく加速させるものかと思われた。しかし、SRK-SP11複合体のモデリングは、AlphaFold2のみでは十分な精度が得られないことが直ちに判明した。そこで、我々はColabFoldをベースに、アブラナ科のうち同属のSP11類縁配列98本のみを厳選してMultiple sequence alignment (MSA)を丁寧に構築し、それを用いて構造予測することで、大幅に予測モデル信頼性が向上することを示した。さらに、MDシミュレーションを用いた結合自由エネルギー変化の計算によって、98ハプロタイプうち57ペアが強い結合を形成することが示された。以上の成果は実験実証こそ行われていないものの、自家不和合性を制御する分子の創出に向けて構造的な知見を大きく増強することができたと位置づけることができる。また、我々は以上の成果を2023年10月に論文として発表した。
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